#991
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<GPシリーズ・NHK杯詳報> 羽生結弦「思い出の大会で得た安堵と決意」

今季ベストのスケートカナダの得点には及ばなかったが109.34点でSP首位に。
自身初の4回転ジャンプ成功、史上初の300点超え、そして平昌オリンピック直前での負傷棄権――。思い出深きNHK杯の舞台で王者の胸に去来した不安、そして、それを乗り越えた先で新たに抱いた覚悟とは。(Number991号掲載)

 フリーの『Origin』を滑り終えたあと、氷上にしばし、座り込んだ。

 11月23日、グランプリシリーズNHK杯を終えて、穏やかな表情を浮かべる羽生結弦の心にあったのは、安堵だった。

 NHK杯は、昨シーズン、埼玉で行われた世界選手権以来の日本での試合であり、羽生にとってさまざまな思い出の込められた大会でもある。

 2010年の名古屋は、シニアデビューして初のグランプリシリーズ出場となった大会だった。そのとき羽生は、フリーで初めて4回転トウループを成功させている。2015年の長野では、ショート、フリー、トータルの全てで世界最高得点を更新。史上初の300点超えとなる322.40点で優勝すると、会場のビッグハットは熱狂に包まれ、今なお語り継がれる大会となった。そして平昌五輪シーズンのさなかにあった2017年の大阪は、公式練習中に右足を負傷。棄権を余儀なくされた。

 3年ぶりに滑る、思い出深いNHK杯について、ただ、羽生自身はこう答えた。

「試合は試合、その時期にある試合という感じなので。思い出はすごく強いですが今回は今回。いい演技をして、培ってきたものを出して、しっかり評価していただいて更新できたらいいなという思いはある。NHK杯だからというのはない。しっかり頑張りたいと思います」

世界最高得点は意識しない。

 ネイサン・チェンが昨シーズンの世界選手権で樹立した世界最高得点(323.42)を更新する期待も集まっていた。

「昨シーズンの得点と比べてもしようがないなと自分は思っていますし、僕たちにとってはルールとか大きく変わっているところがあるので、昨シーズンは昨シーズン、特に意識はしていないです」

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photograph by Asami Enomoto

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