初めて読んだのは、二十三、四歳の時だった。大阪の茨木市に新設された大学を舞台とした、鮮烈で瑞々しい青春文学。多くの人に読み継がれてきた古典的名作である。恋愛小説、青春群像劇、そして作者の大学時代のテニス部の体験が惜しみなく注ぎ込まれた素晴らしいスポーツものでもある。
何度も読み返していて、色々なシーンを心に刻んでいる。一番強く残ったのが、主人公の燎平と親友の金子が二人きりで、まだろくに建物もないがらんとしたキャンパスに土のテニスコートを手造りするところだ。揺るぎない情熱の持ち主の金子に、燎平はいやいや付き合い、一度は投げだしかけながらも最後まで協力する。燎平にとっては、無為かもしれない大変な労苦である。このゼロからの始まりは、物語を象徴するように思う。
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