デリック・ローズ(ミネソタ・ティンバーウルブズ)が片時も離さずに持ち歩いているモスグリーン色のボールがある。通常の3倍の重さのメディシンボールで、それでいて、ふつうのボールのように弾むので練習にも使える。今は同じボールが売られていないらしく、ローズは人に預けることなく、宝物のように常に持ち歩いている。数年前に試合後の十数分間、行方不明になったときには、見つかるまでパニック状態だったという。
ローズは「これは僕の“ウィルソン”なんだ」と、映画『キャスト・アウェイ』で、無人島に漂着したトム・ハンクス演じる主人公が、バレーボールに“ウィルソン”と名付けて大切にしていた話に喩えた。ローズ自身はボールに名前はつけていないし、ここは無人島ではない。しかし6年半前に左膝前十字靭帯を断裂して以来、様々な故障に苦しみ、チームから見放され、居場所を求めて転々とする孤独を経験したローズにとって、ボールが心の拠り所だったという点では同じだった。
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