土俵上での戦いをよそに、大相撲界に激震が走っている。場所前の巡業中、横綱日馬富士が同郷の後輩関取である貴ノ岩を酒席で暴行した“事件”。貴ノ岩の休場は、この暴行による頭部のケガが理由とされ、「ビール瓶で殴った」「いや、なかった」と情報は日々“上書き”されて錯綜する。報道は過熱し、相撲ファンも戸惑うばかりだ。
そもそも、理由や程度はともあれ日馬富士の暴行は言語道断。沸騰する相撲ブーム到来の今、禊ぎは済んだはずの過去の不祥事を想起させ、水を差す結果となった。
しかし、ここまでの大騒動となった要因は貴乃花親方の行動にもあるだろう。貴ノ岩の師匠である貴乃花親方は、公になる2週間以上も前に、すでに被害届を提出していたことが発覚。受理した警察からの連絡で、場所前に事件を把握した協会のヒアリングに対し、「わからない。階段で転んだと聞いた」と答えていたとされる。これが協会の対応を遅らせ、本場所中に斯かる大問題となってしまった。協会理事で巡業部長の要職にある親方の言動に、「隠蔽体質の協会を改善するための行動か」はたまた、「理事選挙を睨んで現体制を攪乱する目論見か」などの疑惑まで呼ぶことになってしまった。
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photograph by KYODO