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“死のゾーン”脱出の臨場感。これぞ著者の代表作。 ~沢木耕太郎・著『凍』~

2014/10/01

 スポーツに素材を求めた著者の作品中のベストが本書だろう。

 世界的クライマーの山野井泰史・妙子夫妻のヒマラヤの難峰ギャチュンカン北壁の登頂とその下山中に猛烈な風雪と雪崩に捉えられた絶望的な状況からの奇跡的な、そして感動的な生還記だ。

 ほとんど垂直な岩と氷の壁、酸素濃度は平地の3分の1で、氷点下の厳寒の地。標高7000mを超える高所は登山家たちから“死のゾーン”と呼ばれる。ここで二人は吹雪に飛ばされ、雪崩に巻き込まれ、装具の一部を失い、食糧も尽きてしまう。幅10cmほどの岩棚に身を寄せ合ってビバークし、以前の登山の凍傷で手足の指を失っている妙子は落下し、一度は離れ離れになり、再会し“死のゾーン”から脱出、生還する。二人はここでも凍傷になりさらに手足の指を失うことになる。

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photograph by Sports Graphic Number

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