劇薬のようなサッカー批評を読みたかったら、ヘスス・スアレスの本を手に取ればいい。意外な読後感を含めて、十二分に愉しめるはずだ。
8歳までウルグアイで育った彼は、生粋の「フットボレーロ」。つまり、勝ち負けや、選手の有名性を問わず、人がサッカーボールを蹴った時に感じた衝動を素直に表現するジャーナリスト。自身のサッカー美学から外れる者をことごとく蹴散らし続けてきた、闘う男ともいえる。
純粋すぎるゆえの毒は、同胞にも向けられる。
現代を代表する監督たちに関して綴った前作の『名将への挑戦状』。それから続く歯に衣着せぬサッカー人物批評シリーズは、いよいよ選手たちとの対決に突入した。インタビュー相手との喧嘩も上等。「譲歩」という言葉が、彼の辞書には存在しないらしいので、スアレスの愛するスペクタクルなサッカーと相反するものには容赦がない。かつて、カペッロやモウリーニョの戦術を完膚なきまで論破した彼は、C・ロナウドにすら遠慮なく牙をむく。アスリートとしては突出しているが、フットボール・インテリジェンスにおいては凡庸の域を出ない、と。気持ちよい程ばっさりである。
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photograph by Ryo Suzuki