1年納めの九州11月場所を前に、稀勢の里はこう述懐していた。
「2ケタ勝って地元茨城に帰っても、『残念だ』と言われてしまう。ここ一番という勝負どころで負けるから、そのイメージが先行するのか、『またか』と言われるんですよねぇ」
そう苦笑しながらも、自分に言い聞かせるように、さらに言葉を繋げた。
「そこを無くして皆さんをガッカリさせないよう、大事な一番で勝てるような精神力をつけなきゃいけませんよね。ホント、特にこの1年は一番一番の重みをズシンと感じています」
日本人横綱待望論が出て久しい。盤石の横綱である「白鵬キラー」としても、その期待を一身に背負う稀勢の里。大関昇進から、はや2年の月日が経った。同僚大関の琴欧洲、琴奨菊、鶴竜が精彩を欠くなか、稀勢の里が9勝に終わったのは、昇進2場所目のたった1度だけ。常に10勝以上の勝ち星を挙げているのだ。それは稀勢の里なりの「密かな矜恃」となってもいるようだ。それでも周囲の大きな期待に応えられない自分を、はがゆく思うことがあるか――と問うてみた。
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photograph by KYODO