概ね40歳以上のラグビーファンの頭には、あの映像が深く刻まれているはずだ。
曇天の下、黒いジャージーを着た神戸製鋼のイアン・ウィリアムスがタッチ沿いを走り抜ける。追うグレーのジャージー、ワテソニ・ナモアの腕が宙を泳ぐ。イアンがインゴール中央まで回り込み、細川隆弘が逆転のキックを蹴り込む。観客席で宮地克実監督が茫然と立ち尽くす……。
それから20年を経たトップリーグのプレーオフ決勝当日。朝のミーティングで三洋電機のメンバーが見た映像には、そんな無念の場面が、これでもかというほど収められていた。
「じゃあ、リラックスしていこう」と飯島均監督が声をかけると、チーム最古参のPR相馬朋和は目を腫らして、「こんなの見せられて、リラックスできるわけないじゃないですか」と言い返した。「すぐに試合をしたくなった。試合まで3時間待つのがもどかしかったよ」とトニー・ブラウンは言った。
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photograph by Tamon Matsuzono