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オープン戦で活躍するのは半人前!?
2大新人、澤村&斎藤は通用するか。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byTamon Matsuzono
posted2011/03/14 10:30
新人離れした実力を示しつつある澤村拓一。原監督はオープン戦の成績を見て「私は、内海か東野のどちらかに開幕投手を務めてもらいたいと思っています。もしその2人でなければ、その投手(澤村)が上回ったということです」(3月4日)と微妙な発言をしている
オープン戦におけるプロは、似て非なるもの。そう言っていい。
1992年のドラフト会議で近鉄にドラフト1位で指名を受けた小池秀郎が、ルーキーイヤーを振り返り、こんな話をしていたことがある。小池はその2年前のドラフト会議で、史上最多タイとなる8球団から指名を受けたほどの左腕だった(ロッテが交渉権を得たが、小池はこれを拒否し社会人野球の松下電器に進んだ)。
「やっぱりプロは違いますよ。オープン戦で新人賞をもらって、正直、いけると思った。でも、開幕したら、ぜんぜん目の色が違うんですよ。秋山(幸二=当時、西武)さんも、清原(和博=同)さんも。秋山さんに西武球場でホームランを打たれたとき、バックスクリーンを越えていったことがある。裏にボウリング場があったんですけど、その屋根にボン、って。どこまで飛んでいくのかと思った。これがプロなんだと思いましたね」
結果、小池の1年目は27試合に登板し、3勝4敗に終わっている。
昨年通用した球が、今年も使えるとは限らないのがプロの世界。
ちなみに小池は、2年目は5勝、3年目は4勝、4年目は3勝どまり。そうした経験を経て、5年目に15勝を挙げ、最多勝のタイトルを獲得した。しかし翌年は7勝と後退。以降も2ケタ勝利に到達することはなかった。
「1年目のキャンプのとき、野茂(英雄)さんや、吉井(理人)さんや、赤堀(元之)のボールをみて、すごいと思った。これがプロか、って。このままじゃ無理だと思ってシンカーを覚えたんですけど、それに4年もかかった。でもそれで通用したからといって、翌年もそのままじゃダメなんです。相手も研究してきますからね。活躍しても、また新しいものを身につけないと」
それがプロの世界というものなのだ。
オープン戦で結果を残している「2大注目ルーキー」だが……。
目下、「2大注目ルーキー」といっていいだろう、日本ハムの斎藤佑樹と巨人の澤村拓一は、ともにオープン戦では1点も奪われていない(3月11日現在)。斎藤は3試合で計6イニング、澤村は韓国ハンファとの練習試合を含めると2試合で計6イニングと、参考資料とするには登板イニングが少ないが、いずれにせよ結果だけを見れば文句のつけようがない。
ただし、今後のオープン戦の結果も含め、それで通用するしないを判断するのはあまりにも早計だ。
小池はこう続けている。
「オープン戦は、結局、若い子がアピールをする場なんですよ。僕も1年目は、いい条件で放らせてもらっていましたしね」