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甲子園の風BACK NUMBER
「スマホ回収しない」「野球部“ムラ”作らない」甲子園強豪・浦和学院の35歳監督が語る、“野球部を特別視させない”方法「進路指導は現実を伝える」
text by

樫本ゆきYuki Kashimoto
photograph byYuki Kashimoto
posted2026/09/01 11:02
今夏の埼玉大会、浦和学院・森大監督の様子
3回に浦学が先制し、先発・西村虎龍は5回まで徳栄打線を無失点に抑えた。6回に追いつかれ、8回表に3点を奪われて1―4。それでもその裏2点を返し、4―3と1点差まで戻した。
9回に3点を追加され、3―7。その裏、代打として打席へ向かったのが主将・蜂巣祥万だった。背番号18。突出したスター選手ではないが、仲間たちが早くから「キャプテンはこいつしかいない」と考えていた選手だった。背中で引っ張るキャプテン。2017年の赤岩主将のチームとどこか似ている雰囲気があった。
蜂巣は中前打を放った。一塁へ到達すると、ベースコーチの2年生が、エルボーガードを受けとりながら泣いていた。
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「お前、何で泣いてんの? まだ終わってないよ」
そう声をかけると、自然に笑みがこぼれたという。
4点差の9回裏でも「まだ終わってない」と言える。それは、この1年、チームが積み重ねてきたものの一つだった。
浦和学院は3―7で敗れ、甲子園には届かなかった。
「私の実力不足。大人の責任」
試合後、森は「勝たせてあげられなかったのは、私の実力不足。大人の責任以外、何者でもない。それが率直な思いです」と話した。
言い訳はしなかった。采配を問われることも受け入れた。ただ、2025年夏とは違った。
「去年は力があったけれど、自分たちで負けた。今年は力がないと言われながら、バッテリーを中心に成長して、決勝まで来た」
負けは負けである。「良い敗戦」という言葉で、選手たちの悔しさを美化することはできない。彼らは甲子園へ行きたかったし、森も連れていきたかった。
ただ、2025年夏にできなかったことが2026年夏にはできた。苦しくなっても自分たちから試合を手放さなかった。最後のアウトまで、主将が後輩に「まだ終わってない」と言えた。その違いを、森は気づいていた。
森は2025年夏の敗戦を「質の高い挫折をさせてもらった」と表現した。野球を強くすることと、一人の高校生を育てることを分けない。それが、現在の森が考える浦和学院なのだろう。「これがベースになる」。この夏のチームを完成形とは考えていない。



