- #1
- #2
将棋PRESSBACK NUMBER
天才・藤井聡太を横目に“奨励会13年半の苦労人”28歳が…竜王戦まであと1勝「余計な緊張をしなくなった」西山朋佳との一局で柵木幹太覚醒のナゼ
posted2026/08/22 17:01
2025年1月、柵木幹太が臨んだ西山朋佳との棋士編入試験最終局
text by

田丸昇Noboru Tamaru
photograph by
Keiji Ishikawa
第39期竜王戦の決勝トーナメントで、柵木(ませぎ)幹太五段(5組優勝=28)が3人のA級棋士らを5連破し、挑戦者決定三番勝負に進出した。そして服部慎一郎七段(2組優勝=27)と、1勝1敗で互角の戦いを繰り広げている。
柵木五段は棋士4年目で、順位戦では最下級のC級2組。さしたる実績はこれまでなかった。今期竜王戦で大躍進した契機となったある対局、苦労人だった奨励会の三段時代について、田丸昇九段が解説する。【棋士の肩書と年齢はいずれも当時】
天才・藤井聡太を横目に…奨励会で続いた苦闘
柵木は1998年2月18日、愛知県西尾市で生まれた。将棋を覚えたての小学1年のとき、同県安城市で行われた将棋大会で増田裕司六段(38)に指導対局を受けると、頑張りぬく指し方を褒められた。後年に増田門下に入り、2009年に11歳で関西奨励会に6級で入会した。当時の東西の同期生には、本田奎六段、宮嶋健太四段がいた。
ADVERTISEMENT
柵木は入会から6年半後の2016年3月に三段に昇段し、同年度前期三段リーグに参加した。4人の新三段には、藤井聡太(13)、西山朋佳(20)らがいた。
天才少年と嘱望されていた藤井は昇段争いに加わり、最終戦で西山に勝って14歳2ヵ月の最年少記録で四段に昇段した。柵木は11戦目に藤井に敗れ、4勝14敗の成績で降級点に該当した。
柵木は早々につまずき、2期目の三段リーグも中盤で3勝7敗と負けが込んだ。精神的に不調に陥ったが、在籍した名古屋大学の将棋部員たちに励まされて立ち直った。3期目に11勝7敗で勝ち越すと、以降は安定した成績を挙げた。ただ昇段争いになかなか加われなかった。11期目の最終戦で自力昇段の機会を初めて得たが、敗れて13勝5敗となり、順位1枚の差で「次点」となった。
14期7年、崖っぷちでつかんだプロへの切符
柵木は14期目の三段リーグ(2022年10月~23年3月)の中盤で、10勝2敗と1位を走っていた。しかし勝ち将棋を逃し、最終日の時点で8番手となった。ただ長年の経験から、連勝すれば昇段できると思ったという。そして13勝5敗の成績で次点となった。規定の「次点2回」によって四段に昇段し、フリークラス編入の権利を年齢制限ぎりぎりの25歳で得た。三段リーグは14期7年、奨励会在籍は13年半に及んだ。
柵木新四段は『将棋世界』誌で苦しかった三段時代を回想し、「スタートがかなり遅れたが、タイトルを獲得できる棋士になって、応援してくださる方たちに恩返しをしたい」と結んだ。
それが3年後に本当に実現しそうになるとは、本人は思いも寄らなかっただろう。

