- #1
- #2
将棋PRESSBACK NUMBER
天才・藤井聡太を横目に“奨励会13年半の苦労人”28歳が…竜王戦まであと1勝「余計な緊張をしなくなった」西山朋佳との一局で柵木幹太覚醒のナゼ
text by

田丸昇Noboru Tamaru
photograph byKeiji Ishikawa
posted2026/08/22 17:01
2025年1月、柵木幹太が臨んだ西山朋佳との棋士編入試験最終局
柵木四段の公式戦の通算成績は、2023年度が14勝10敗、24年度は18勝13敗。いずれも5割台後半の勝率だが、フリークラスからC級2組に昇級するには、やや物足りない成績だ。
そんな柵木が思わぬ形で、棋界内外から注目された。
2024年7月。西山朋佳女流三冠(29)は出場した23年6月からのプロ公式戦において、高橋道雄九段、木村一基九段、佐々木大地七段、渡辺和史六段らのタイトル経験者や若手精鋭を破り、13勝7敗の成績を挙げた。「棋士編入試験」を受ける要件(10勝以上、勝率が6割5分以上)を満たした。
ADVERTISEMENT
西山は「受験させていただきます。自分の持ち味を生かせるように頑張ります」と語り、2024年7月に将棋連盟に申し込んだ。西山は棋士編入試験で、月1局のペースで直近の5人の新四段と対戦し、3勝すればフリークラス編入の形で四段に昇段する。メディアは初の女性棋士誕生を期待して大いに注目した。
「初の女性棋士」誕生を阻む“敵役”として
棋士編入試験は2024年9月から始まり、2勝2敗の五分で第5局を迎えた。※持ち時間は各3時間。
2025年1月22日。西山女流三冠は新設された大阪府高槻市の関西将棋会館で、柵木四段と対戦した。当日は多くの報道陣が訪れ、囲碁将棋チャンネルは対局を生放送した。
両者は三段リーグで対戦が5局あり、いずれも柵木が勝っている。ただ柵木の話によると、もつれた戦いの末に運よく勝った将棋が多く、西山に相性がいいとは思っていないという。
西山にとって本局は、人生がかかった大一番だ。一方の柵木は非公式戦で、勝負が何かに影響することはない。ただ初の女性棋士誕生が期待されている状況なので、敵役になりかねない複雑な立場と心境だったと思う。
対局開始時の両者は、西山は自然体の様子だったが、柵木はかなり緊張していたという。
「暴れ馬」の猛攻、敗勢に追い込まれる
柵木の先手番(第1局の時点で決定済み)で対局が始まった。西山は武器とする振り飛車を用いた。柵木は左美濃から銀冠の囲いに組み替えた。柵木が中盤で積極的に動くと、西山は角を相手の玉頭に利かして応戦した。その後、激しい戦いが展開された。「暴れ馬」の異名で知られる西山は厳しく攻め込み、第1図では優勢と思われた。
柵木は負けになったと思ったが、開き直って指した。

