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「一夜明けたらクビだな!」アーセナルファンが浴びせたチャントは、チェルシー新体制が直面する茨の道の始まりに過ぎない
posted2026/01/21 20:00
アーセナルの前に敗れたチェルシーイレブンとロシニアー
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山中忍Shinobu Yamanaka
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Getty Images
先制点を奪われて前半が終わると(0-1)、ホーム観衆から軽いブーイングが起こったスタンフォード・ブリッジ。1月14日、チェルシーがホームにアーセナルを迎えた、リーグカップ準決勝第1レグでのことだ。
開始早々7分の失点を除けば、ほぼ互角と言える45分間だった。チェルシーは、カップ戦で実現した首位アーセナルとの大一番で、最大の武器であるコール・パーマーを怪我で欠いていた。中盤の底で盾となるモイセス・カイセドも、出場停止で不在。それでも、MFエンソ・フェルナンデスと、右ウインガーのエステバンが、相手GKケパにセーブを強いた。だがファンは、不満の意を表明せずにいられなかった。この試合が、前週に発足したリアム・ロシニアー新体制下でのホーム初戦であっても。
最終的にも敗れた(2-3)一戦では、チェルシー・サポーターたちが、前ロシア人オーナーの名前を連呼してもいた。彼らの不満は、トッド・ベーリー会長を「顔」とする、米国系投資家集団の現経営陣に向けられている。より具体的に言えば、ピッチ上よりも、帳簿上の長期的な安定に主眼が置かれていると思わせる、現政権下での「若手路線」だ。
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チェルシーでは、4年前の買収を機に、2021年CL優勝チームの解体と若返りが一気に進んだ。今季も、23.4歳のスカッド平均年齢はプレミア最年少。悪いことではないのだが、最年少チームであること自体が、1つの成果のように語られ続けるようになってしまった。過去3シーズン半の移籍市場に、プレミアでも最大級の補強予算を投じていながら、国内外の双方で優勝の有力候補とは呼ばれないチームとなっている。
新監督は、初会見の席でマンチェスター・ユナイテッドの「92年組」を引き合いに出した。同年のFAユースカップ優勝メンバーから、ライアン・ギグス、ポール・スコールズ、デイビッド・ベッカムらの若手6名が、1軍でも主軸と化した当時ユナイテッドに通じるポテンシャルが、チェルシーにはあると言うのだ。
だが、ロシニアーの新任地では、アカデミー卒業生が売却益100パーセントの「自家製」として、移籍市場で“戦力視”される可能性の方が高い。英国高級紙の『タイムズ』が、「オーナーの真意見たり」と報じたのは昨夏。チェルシーは、移籍市場で3億ポンド(約640億円)台の資金を回収した史上初のクラブとなったのだった。
ロシニアーには、こうした現オーナーによるクラブ経営、更には「チーム作り」に対する免疫がある。共同フットボールディレクター2名に加え、選手のリークルート部門と育成部門のディレクター3名も序列的に上に位置付けられるチェルシーでは、補強に関する監督の発言権が極めて弱いのだが、前任地のストラスブール(フランス1部)は、チェルシーと同じ経営母体を持つマルチクラブ制の一部であり、傘下の「格上」に引き抜かれるまでの1シーズン半で、仕事環境は承知の上なのだ。元日に退任が発表されたエンツォ・マレスカマレスカのように、不満を募らせる可能性は低い。
しかしながら、サポーター間に鬱積している不満の大きさを考えると、チェルシー新監督としての前途は多難だ。1月10日に敵地でチャールトン(2部)を軽く退けた(5−1)、FAカップ3回戦から指揮を執るロシニアーは、同じポゼッション志向でも、横パスやバックパスの多い“遅攻”がファンに不評だった前監督よりも積極的スタイルを好むと見受けられる。アーセナル戦の後半12分、アレハンドロ・ガルナチョが決めたチーム1点目は、敵のプレーメイカーであるマルティン・ウーデゴーアのボールロストを誘った、E・フェルナンデスによるプレッシングがきっかけだった。
とはいえ、年齢はマレスカより若い41歳で、監督歴もまだ計3年というロシニアーが、フロント主導のチーム作りに問題があるチームを、早々に立て直すことができるだろうか? 元SBはイングランド人ではあるが、ファンにとって意中の後任候補であったはずもなく、チェルシー経営陣にとって、最も引き抜きやすい対象であったことが就任理由と理解されている。実際、それが事実でもあるはずだ。
アーセナルのファンが、「一夜明けたらクビだな!」と歌ってロシニアーをやり込めたのは、後半4分にCFビクトル・ギョケレシュがチェルシーからチーム2点目を奪った直後だった。クロスへの対処を誤って絶好機を与えたGKロベルト・サンチェスは、相手DFベン・ホワイトのヘディングによる1失点目でもミスを犯していた。安定性を欠く正GKは、補強失敗の1例。かつ、その効率の良さで「セットプレーFC」とも呼ばれるアーセナルとの対戦で、いきなりやられたチェルシー。こうした状態が続くようであれば、自軍のファンから「明朝にはクビだな」とのチャントで非難されるロシニアーの姿も想像には難くない。
この一戦では、後半早々に新監督がベンチから送り出したガルナチョが、同38分にもネットを揺らしはした。だが、その12分前には、2-1から3-1へと、再び2点差をつけられてしまっていた。ボランチのアンドレイ・サントスも、CBのウェスレイ・フォファナも、敵のアンカー、マルティン・スビメンディに楽々とかわされてシュートに持ち込まれている。
チームの若さは、集団として揃って成長を遂げることが許されてこそ意味がある。「換金」による若手の入れ替えが繰り返される状態では、パフォーマンスの不安定さ、集中力のむら、精神的な脆さ、ゲームマネージメントの下手さといった、若さ故のデメリットを抱え続ける。監督には、一朝一夕に手を打ち難いチームの弱点として。
1点差とはいえ、守備の堅さでも知られるアーセナルを相手に、2月3日に行われる、敵地での第2レグで逆転の決勝進出を果たすことは至難の業だろう。それ以前に、ロシニアーがチェルシーで挑む、フロント主導のチーム作りに根差す問題との戦いには、早くも就任2試合目で黒星がついた。そう思わずにはいられない、準決勝第1レグ敗戦だった。
