Number ExBACK NUMBER

「部活の体を成していない」練習は閑散、熱血指導は空回り…弱小だった“偏差値78”「関西の超進学校」ハンドボール部が強豪になった“奇跡の軌跡” 

text by

別府響

別府響Hibiki Beppu

PROFILE

photograph byShiro Miyake

posted2026/08/05 11:01

「部活の体を成していない」練習は閑散、熱血指導は空回り…弱小だった“偏差値78”「関西の超進学校」ハンドボール部が強豪になった“奇跡の軌跡”<Number Web> photograph by Shiro Miyake

今夏のインターハイへの出場を決めた東大寺学園ハンドボール部。現監督が就任した約20年前は、今とは全く違う雰囲気だったという

「そういう目標があったせいもあって、最初はとにかくストイックにキツい練習をたくさんやったんです。フットワークや走り込みとか、シンプルにハンドボールに直結するようなトレーニングですよね」

 もともと練習時間にハンデがあるのは承知のこと。だからこそ安井は文献やインターネットの情報をかき集め、自身の経験とも照らし合わせてハンドボールという競技の強化に最も効率的なルートを選ぼうとした。

 おそらくだが、もとから全国大会を目指しているような強豪校であれば、この安井の指導法は決して間違っていなかっただろう。赴任したばかりの若手教諭による理論的な、でもどこか熱いスポ根物語として、いずれは結実していたのかもしれない。

ADVERTISEMENT

 だが、安井がいたのは全国でも屈指の超進学校である東大寺学園である。

 ほとんどの生徒にとって、運動部で全国大会など想像の埒外なのだ。そもそも運動部に入ることすら考えていない面々も多かった。成り行き上、ハンドボール部に在籍していたとて、その熱量について来られるワケがないのである。

「何と言うか……競技を楽しむということをあまりに軽視していたんです」

 練習はキツいはずなのに、遅々として結果は出ない。そうなれば、もともと競技への熱量が高い選手ばかりではない同校では、部に顔を出す選手もどんどん減っていく。そんな悪循環に陥りつつあった。

工夫次第でできる「夢中になれるトレーニング」

 転機となったのは、ある元日本代表選手の存在だった。

「もともと僕が銘苅淳さん(現アルバモス大阪高石監督)のファンだったこともあって、SNSでつながりがあって、そこから『一度練習を見に来てくれませんか?』という話になったんです。それで実際に東大寺学園まで来てくれて」

 そこで銘苅が強調していたのは「夢中になれるトレーニングは、工夫次第でいくらでもできる」ということだった。

「ハンドボール用のボールは使っているんですけど、バスケットのファンドリルとか、サッカーのトレーニングとか……いろんなコーディネーションを取り入れて。それで部員がすごく楽しそうにトレーニングをしていたんですよね」

【次ページ】 高かった「インターハイ出場」という壁

BACK 1 2 3 4 NEXT
#東大寺学園高校
#銘苅淳
#東京大学
#京都大学

他競技の前後の記事

ページトップ