炎の一筆入魂BACK NUMBER

「ラストチャンスだぞ」戦力外も覚悟した育成入団7年目のカープ持丸泰輝が掴みつつある正捕手への道のりと課題「まずは守備と考えて…」 

text by

前原淳

前原淳Jun Maehara

PROFILE

photograph bySANKEI SHIMBUN

posted2026/06/22 17:00

「ラストチャンスだぞ」戦力外も覚悟した育成入団7年目のカープ持丸泰輝が掴みつつある正捕手への道のりと課題「まずは守備と考えて…」<Number Web> photograph by SANKEI SHIMBUN

捕手としての能力を高め、7年目にして定位置を掴みつつある持丸

 また、一軍から遠ざかった。ただ、逃げることもできない。一軍レベルとの間にある差を埋めるためというよりも、このままでは終われない自身への怒りの方が強かった。全体練習や由宇での試合を終えた後、裏方にサポートを頼んでブロッキングやキャッチングの練習を続けた。

「正直、嫌々やっていた時期もありました。地味な練習が多いので、打撃に逃げがちだったんですけど、何とか守備に比重を置いて継続できました。その練習量が自分の精神安定剤のようになっていたところもあります。『持丸は守れない』と思われていたと思うので、とにかく信頼を得ないといけない。そして自信をつけないといけない。9割は守備のことをやるくらいでいいと極端な考えでやっていました」

 一定の評価を得ていた打撃で一発逆転を狙うのではなく、毎日のように白球をミットやプロテクターで受けた。捕手技術は一朝一夕に向上しないが、それでも自分と向き合ってきた。

ADVERTISEMENT

「どこで挽回したらいいのか、どこでアピールしたらいいのか。自問自答したときもありました。でも、やっておくべきことをやって一軍に呼ばれなかったら、自分の実力がそこまでだったと思えるかなと」

監督も認めるレベルアップ

 研鑽の日々によって、ブロッキングやキャッチングへの不安がなくなったことで、マスク越しの景色が変わった。これまで頭の中を支配していたものが解消されたことで、送球面やリード面などに意識を向けられるようになった。二軍では企図された盗塁を一度刺し(盗塁阻止率10割)、捕逸は一度もなかった。担当コーチだけでなく、投手陣や投手コーチにも成長を認められ、先輩の會澤も「一軍で戦える」と周囲に推した。

 まさに「石の上にも三年」。チームが苦しい捕手事情にある中で4年ぶりの一軍昇格を果たすと、与えられた出場機会で二軍での評価に間違いがなかったことをプレーで示した。

「非常に頑張っていると思います。取る、投げる、リードに関してもそうだけど、キャッチャーとしてレベルアップしていると思います」

 新井監督からそう評価され、持丸は捕手の一番手に名前が挙がるようになった。

 初めて経験する重圧の連続だ。二軍でもこれほどコンスタントに出場したことはない。捕手人生で初めて2日連続サヨナラ負けを味わい、交流戦では6連敗を喫した。捕逸は気づけばリーグワースト。何度もリプレー映像のように頭の中で繰り返される悔恨とともに眠れぬ夜を過ごしながらも、朝になれば切り替えて次なる戦いに向かう。捕手は自分の人生だけでなく、投手の人生も背負っている。

「自分のことに必死になりすぎて、捕手として負けることを受け入れてしまってはいけないし、そうしちゃいけない立場だと思っています。欲を出しすぎず、まずは守備と考えてやっています」

 持丸が奮闘を続ける一方で、二軍から名前が挙がる若手捕手はいない。広島にとって正捕手不在の問題が解決したわけではない。だが、持丸にとっては違う。これまで何度も逃してきたチャンスを今度こそつかみ、野球人生を変えようと必死だ。広島の捕手事情を巡る不安と期待。その中心にいるのが、持丸だ。

チェックを入れてボタンを押すだけ
Google検索
Number Webを見つけやすくする

関連記事

BACK 1 2
#広島東洋カープ
#持丸泰輝
#坂倉将吾
#石原貴規
#會澤翼

プロ野球の前後の記事

ページトップ