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「これがA級棋士として最後の夜かも」なぜ4連敗から佐藤天彦は絶望から這い上がれたか…永瀬拓矢戦で示した“達人の域”への渇望とは
posted2026/05/16 11:15
佐藤天彦に永瀬拓矢。将棋界のトップを走る棋士の思考は、すさまじいものがある
text by

大川慎太郎Shintaro Okawa
photograph by
Shintaro Okawa,Keiji Ishikawa
これがA級棋士として最後の夜かもしれない
——A級は4連敗と苦しい状況でしたが、11月末から12月初旬に朝日杯と叡王戦でそれぞれ2連勝しています。居飛車の手応えは出てきましたか?
「現代の将棋は序・中盤がとても大事ですが、早指しだと序盤でミスしても逆転もあり得るので、居飛車転身の粗が出づらくなっていたのかもしれません。逆にその粗みたいなものが決定的になりやすいのが、持ち時間6時間の順位戦なのかなと」
——じっくり考えられてとがめられるということですね、さて、12月10日に行われた6回戦の糸谷哲郎九段戦は相振り飛車になりました。
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「先手の僕が四間飛車に構えたのですが、糸谷さんらしく遊びというか、即興性を交えた感じの序盤になって相振り飛車になりましたね。この将棋は全体的に力負けで、仕方ないかなという感じでした」
——年明けの1月15日に大勝負がやってきました。2勝4敗の中村太地八段と7回戦で顔を合わせました。天彦さんが1勝5敗なので、ここで負けたら相当厳しかったですよね。
「僕自身も、ここで負けたら終わりだなって。対局前日の寝る前のことを覚えているんですけど、もしかしたらこれがA級棋士として最後の夜かもしれないなと思っていましたね」
——先手の中村さんが居飛車の力戦形から矢倉に組み、天彦さんは雁木に構えました。この将棋を振り返ってみていかがですか。
「自分の思考がうまい流れに乗ったというか、完璧に近い将棋を指すことができました。厳しい状況でもいい将棋が指せたので、まだ終わりじゃないんだな、と」
降級前提の「暗さの中での明るさ」
——この将棋に勝たれた後、朝日杯でベスト4に進出して公開対局に出場することも決まり、叡王戦でも勝ち上がっていました。手応えはありましたか?

