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「これがA級棋士として最後の夜かも」なぜ4連敗から佐藤天彦は絶望から這い上がれたか…永瀬拓矢戦で示した“達人の域”への渇望とは 

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大川慎太郎

大川慎太郎Shintaro Okawa

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photograph byShintaro Okawa,Keiji Ishikawa

posted2026/05/16 11:15

「これがA級棋士として最後の夜かも」なぜ4連敗から佐藤天彦は絶望から這い上がれたか…永瀬拓矢戦で示した“達人の域”への渇望とは<Number Web> photograph by Shintaro Okawa,Keiji Ishikawa

佐藤天彦に永瀬拓矢。将棋界のトップを走る棋士の思考は、すさまじいものがある

「順位戦はかなり厳しい状況でしたけど、そんなに暗い気持ちではなくて。居飛車を取り入れてすぐの割には結果が出ている面もあるので、これを積み重ねればさらに成績を伸ばせるんじゃないかという希望にもなる。A級から落ちてもまだやれるかもみたいな(笑)。ええ、落ちることが前提なんですよ。それでもこれからまた棋士として、それなりに楽しくやっていけるんじゃないかなっていう感じで、暗さの中での明るさがありました」

——1月27日の「ラス前」で、近藤誠也八段と対戦し、先手番で相掛かりを採用しました。

「まずは自分の中盤の感覚がよくなかったですね。それともう一つ、近藤さんにうまくいなされたというか。水漏れなく受けられたのが、さすがA級棋士というか(笑)。甘い言い方になるかもしれませんけど、相手が相手ならこの攻めは通ってもおかしくなかったと思うんです。ただこれが通らないのが、A級という戦場ならではですよね」

「この攻めは通らないのがA級」近藤戦の衝撃

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——この将棋を見ていて印象深いのは、とにかく近藤さんが強かったな、と。

「近藤さんの異様な力強さが存分に出ていましたよね。現代において、彼は定跡党ではないのにA級まで昇っています。それはどういうことなのかがよくわかった将棋でした。定跡にそこまで頼りすぎずにやってるだけあって、中盤の対応力などにすごい売りがあるんだなと感じさせられました」

——「ラス前」の後は、朝日杯と叡王戦の準決勝、それから竜王戦のランキング戦でも敗れました。そういう状況で2月26日の最終戦の永瀬拓矢九段戦に臨んだ時の心境は?

「結果が出てくれれば、乗った状態で最終戦を迎えることができるんですけど、理想形は作れなかった。あとこの時期は対談本の構成の追い込みでした。鬼校正をやっていて、全体を3~4回見直しながら、てにをはを含めて修正していた。作戦はいろいろ考えていましたが、とにかく忙しかったので、良くも悪くも降級のことを考える暇はなかったです」

“現代将棋の体現者”永瀬拓矢との最終決戦

——永瀬戦では、後手で雁木のような出だしから四間飛車にされましたね。

「現代将棋では序盤で後れを取ったら即負けにつながりかねないという概念はあると思うんですけど、それを再現性をもって起こしているのが永瀬さんです。それこそ昨年11月に行われたA級の近藤誠也ー永瀬戦とかも、近藤さんがちょっと珍しい指し方をしたにもかかわらず、永瀬さんが自動迎撃システムを発動して優勢になった(笑)。確か永瀬名言で『私と研究会をやっている人はこれぐらいの変化は知っておいてほしい』みたいなものはありませんでしたか?」

【次ページ】 「めちゃくちゃ苦しかった」4連敗から掴んだ自力残留

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