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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「まるで“空中殺法”」元世界王者・飯田覚士が驚いた井上尚弥の「普通ではあり得ない身体能力」《運命の一戦・井上尚弥vs.中谷潤人を徹底解説》
posted2026/05/06 17:02
5月2日に東京ドームで行なわれた世紀の一戦、井上尚弥vs.中谷潤人。この試合のポイントを元世界王者の飯田覚士が徹底解説した
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Takuya Sugiyama
口火を切った井上尚弥の左ジャブ
ダウンシーンがなくとも、クリーンヒットが少なくとも、日本ボクシング史上これほどまでにヒリヒリ、ハラハラした濃密すぎる12ラウンドがあっただろうか。
有効打を浴びせるための、有効打を食らわないための極上な駆け引き、やり取り、そして2人しか分からない拳のコミュニケーション……。
満杯の東京ドームで行なわれた世界スーパーバンタム級4団体統一王者、井上尚弥と中谷潤人による無敗対決は1ラウンドから一つひとつのアクションに目が離せなくなる。WOWOW「エキサイトマッチ」の解説を務めるなど海外のボクシングにも精通する元WBA世界スーパーフライ級王者、飯田覚士氏がまず目を奪われたのは、1ラウンド開始5秒「口火を切った尚弥チャンピオンの左ジャブ」であった。
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「カウンターをもらわない意味でもステップインする前足をサウスポーの外側に踏むのが安全策だと言えます。でも尚弥選手はのっけから、外を取らずに内側を選択しました。当たったわけではないけど、このインパクトは小さくありません。当てに行くスピードはもちろん、もしカウンターを打たれたとしてもステップバックのスピードもある。しっかり入って、しっかり出るところまでをセットにしている。スピードに対する絶対的な自信があるからできること」
絶対に当て切って、絶対にもらわない。その決意表明のごとく、スタートから主導権を奪いにいった。井上尚弥がこの日も井上尚弥であることを、中谷のみならずジャッジにも印象づけようとした。
神経が磨り減るような3分間
中谷は重心低く、井上の鋭いステップインを警戒するように広いスタンスを取る。井上が踏み込んでくるところを左で合わせようとするが、「しっかり出るところまでセット」のチャンピオンはすぐに当たらない位置まで回避する。ラウンド終盤には外にステップを踏んでのワンツーから右フックをガードの上から叩く。神経が磨り減るような3分間ではあったものの、揺さぶりを絶えず掛けていくモンスターが序盤の主導権を握った。


