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「まるで“空中殺法”」元世界王者・飯田覚士が驚いた井上尚弥の「普通ではあり得ない身体能力」《運命の一戦・井上尚弥vs.中谷潤人を徹底解説》 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2026/05/06 17:02

「まるで“空中殺法”」元世界王者・飯田覚士が驚いた井上尚弥の「普通ではあり得ない身体能力」《運命の一戦・井上尚弥vs.中谷潤人を徹底解説》<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

5月2日に東京ドームで行なわれた世紀の一戦、井上尚弥vs.中谷潤人。この試合のポイントを元世界王者の飯田覚士が徹底解説した

「それでも中谷選手に対して、まだ遠いと感じていたんでしょうね。昨年9月に戦った(ムロジョン・)アフマダリエフにも届いたのに、もう一つプラスしないと有効なクリーンヒットは取れないと判断したのか、腕を最大限に伸ばし切ってパンチを振り切ろうとした。これ、普通のボクサーならバランスが崩れて、逆に狙われてパンチをもらってしまう。なおかつ尚弥選手は後ろ足が浮くくらい、体を突っ込ませているわけです。

 それなのに体のバランスを崩すことなく、前足の力だけで後ろに体勢を戻す。それで中谷選手の左アッパーを打たせなかったシーンもありましたよね。このような練習もやってきたんだと思います。相当に足腰が強くないと、バランスが良くないとできない芸当。いや、普通に考えたらあり得ないですよ。体操選手のようにピタッと止まってから戻るなんて、ちょっと考えられない身体能力。後ろ足浮かせているのにグイッと戻せるんだからまるで“空中殺法”ですよ」

 中谷が左アッパーを打とうとした瞬間にはもう射程距離から出て、井上が腕を回すようにしてけん制した場面。これには場内からもどよめきの声が起こったほどだ。

極上の一戦はさらなる深淵へ…

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 ただ王者のラウンドとまでは呼べなかった。5、6ラウンドはジャッジ2者が中谷に「10」をつけたように、挑戦者の伸びのある左ストレート、右フックなどパンチが徐々に当たり始めていた。

「6ラウンドの最後、尚弥選手が来たところに右アッパーを合わせようとしました。うまく当たらなかったとはいえ、あの状況で合わせようとしたのは落ち着いている証拠だし、自信が垣間見えました。中盤からはしっかり当てに行くという作戦だったのかなと思いますし、尚弥選手のほうも相手がどうやってこようが分かってきたのでどんどんペースを上げていこうとする意志が見えました」

 呼応と共鳴。息をつくことも許されない極上の一戦は、お互いをさらにボクシングへの深淵へといざなっていく。

<続く>

#2に続く
「中谷潤人ももらったことのないパンチだったはず…」元世界王者・飯田覚士が着目した11ラウンド・井上尚弥の“凄いパンチ”「普通は選択できません」

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