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ボクシングPRESSBACK NUMBER
序盤の状況は「井上尚弥にコントロールされていた」日本プロボクシング協会長がリング真横で見た中谷潤人の“誤算”「打っていけなかった理由は…」
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2026/05/05 17:04
日本プロボクシング協会長のセレス小林が“リングの真横”から見た史上最高の一戦の詳細を語った
「両者ともさすがでした。本当に日本ボクシング史上、最高の試合でした。まずこの言葉を前置きしたうえで自分の感想を口にしたいと思います。
尚弥選手からすれば中谷選手は一番苦手なタイプだと感じます。長身でリーチも長く、距離があって懐も深い。ましてパンチ力、カウンターがあって勝負どころも分かっている。だからスタートで中谷選手が距離を取って戦おうとしたのは理解できます。ただし、“逃げ”の姿勢でそれをやっているわけではありません。尚弥選手のステップインからの右を警戒しつつ、カウンターを狙っていこうとしました。
じゃあ尚弥選手はどうしたか。プレスを掛けていくものの、(距離を)潰し切るまでは行かない。プレスを掛け続けられる距離をキープして、フェイントを入れながら半歩踏み込むか踏み込まないかの出入りを集中してやっていました。空振りして左カウンターをもらうのだけは絶対に避けたいという意思も見えました。
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お互いがせめぎ合う、そのヒリヒリした緊張感たるや凄まじい。リングサイドで見る自分が疲れるくらいですから、リング上で戦う2人は想像を絶するほどだったでしょう」
主導権を握っていたのは井上だった
息をのむ神経戦。どちらかがミスを犯せば、それが命取りになることはリング上から伝わってきた。お互いにクリーンヒットのない展開ながら、主導権を握っていたのは井上のほうだったと小林は言う。
「尚弥選手からすれば(前に)行き過ぎたら左が飛んでくるのは分かっている。フェイントを入れながら(相手に)打たれないタイミングをつくってから、自分で入って先にパンチを当てようとした。入り過ぎない絶妙な距離感なので、中谷選手も手を出しにくい。ハンドスピード、瞬発力においてはやっぱり尚弥選手が一枚上ですからね。一瞬の動作、パンチのモーションは中谷選手のほうが大きい。

