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「イノウエの胸を狙え」海外実況席が拾っていた中谷陣営の声…敗者中谷潤人の“井上尚弥攻略プラン”、英語解説は「イノウエは少し重たく見える」
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byNaoki Fukuda
posted2026/05/04 11:03
12ラウンドの死闘となった井上尚弥vs中谷潤人。海外実況はこの一戦をどう見たのか
「ここからもっと積極的に行くんだ。もっと手を出し始めろ」
ここで中谷陣営は、明確に仕掛け時と見たのだろう。そして、ルディの指示はその次が重要だった。
「胸を狙って押し込め。イノウエはパンチを打ってくる。だから胸を狙え。そうすれば止められる」
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「顔」や「顎」ではなく、「胸を狙え」という指示は、井上のディフェンス能力と距離管理を前提にした、かなり実戦的な修正だった。そして、その修正は実際に試合の流れを変え始める。
海外実況席は「胸を狙うというのはその通りです。そしてインサイドで戦おうとすることです」とルディの指示を評価している。
「ナカタニは3Rとっている」
9ラウンド。中谷が右アッパーからコンビネーションを見せた場面で、海外実況の声色は明らかに変わった。
「ナカタニ、いい動きです。この試合で最高のラウンドかもしれません。ナカタニの短い左もありました。ビッグバンが大きな左を狙っています。直近2、3ラウンドはナカタニの方が良くなっています」
それまで抑制されていた中谷の攻撃が、ようやく線になり始めた。そして、井上が初めて少しずつ受けに回る。
9ラウンド終了後、実況席は「ナカタニは3ラウンド取っていると思う」とまで語った。
そして10ラウンド。この試合で、海外実況が最も熱を帯びたラウンドが始まる。中谷は椅子から早く立ち上がった。その姿を見て、実況は一気に声を上げる。
「直近9分、ナカタニはギアを上げました。間違いなく変化を起こしました。私たちが問うていたことです。では、イノウエはここからどうするのか」
問いは、中谷に向けられていたはずだった。この相手に対して本当に踏み込めるのか。井上のカウンターを恐れず、手を出せるのか。その答えを、中谷は9、10ラウンドで示し始めていた。実況席はさらに続ける。
「イノウエは少し重く見えます。ナカタニは本当に自信があふれているように見えます」
「いまイノウエは警戒的になっています。立場が逆転しています」
「イノウエのパンチが少し熱を失っているようにも見えます。ナカタニには自信、そして主導権があります」
この時点で、英語実況は「流れが変わった」と見ていた。だが、その流れが急に止まる。10ラウンド残り1分、アクシデントが起きた。


