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中谷潤人との“恐怖のスパー”「鼻を折られて血まみれになった」親友の証言…「まったく普通じゃなかった」“最高の生徒”に師ルディは何を授けたのか?
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宮田有理子Yuriko Miyata
photograph byYuriko Miyata
posted2026/04/30 11:31
さまざまなテーマを設けて行われる中谷潤人のスパーリング。トレーナーのルディ・エルナンデスが細かく指示を出す
「こんな少年は見たことがなかった」師ルディの証言
そんな中谷でも「この子は世界チャンピオンになる」と、ボクシングの本場で多くの若者を見てきたルディの“直感”に触れたわけではなかったという。「生まれながらのファイター」の一例として、ルディは同門の現WBO世界フライ級チャンピオン、アンソニー・オラスクアガを挙げた。
「ひと目で普通じゃないとわかるような身体能力、本能、技術を持っている。トニー(オラスクアガの愛称)はすべて自然にできる。でも、だから、考えるのは苦手だ。鍛錬もできない。今はだいぶ、その部分も成長したけれどね」
そして中谷を、好対照として称えるのだ。
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「ジュントはトニーとは違う。けれど、まったく普通じゃなかった。ジュントは、今まで自分が見てきた中で最高で、スペシャルな、ボクシングの“生徒”だ。ボクシングに全精力を傾けて努力する。一つ新しいことを教われば、それが完璧に自分のものになるまで、自分に一切の妥協を許さない。こんな少年を見たことがなかった。そして、その姿勢は今も変わらない。私はジュントを100%、信じることができる」
その信頼は双方向だ。中谷は、ルディと、1998年からアシスタントを務める岡辺大介の両参謀を、二人の眼識を信じることができる。
常に変化する一対一の空間で、打たせずに打つというボクシングの理想を実現し、勝利を手繰り寄せるためのサイエンスが存在する。どうすれば対戦者が戸惑うか。どこをどう打てばより効果的か――。ルディと岡辺は、その筋を読み、指示に転換できる優れた戦術家たちだ。
1988年にボクサーとしての現役生活を終え、実弟の故ヘナロに請われてトレーナーに転じ、90年代にWBA世界スーパーフェザー級王座8度、WBC王座を3度防衛する弟を支えたルディと、その技巧派の名王者ヘナロの“相手に打たせない”ボクシングが大好きで、ルディに弟子入りした岡辺。このコンビから次々と湧き出るアイデア、アドバイスを、中谷は受け止め、トライする。実践のなかで、彼らが言った意味と効果を実感する。そうして中谷のボクシング脳、実践力は現在進行形で醸成の度合いを深めている。
「ルディや大介さんが言ってくれることを試すと、あ、本当だ! ってなるんです。それは今でも変わらなくて、毎日のように新鮮な発見があります。信じられる人たちがそばにいてくれるのは、本当にありがたいです」


