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中谷潤人との“恐怖のスパー”「鼻を折られて血まみれになった」親友の証言…「まったく普通じゃなかった」“最高の生徒”に師ルディは何を授けたのか?
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宮田有理子Yuriko Miyata
photograph byYuriko Miyata
posted2026/04/30 11:31
さまざまなテーマを設けて行われる中谷潤人のスパーリング。トレーナーのルディ・エルナンデスが細かく指示を出す
親友が明かす「ジュントとの恐怖のスパー」
ジュントは、複雑なボクサーだ。
中谷潤人を15歳の時から導いてきたルディ・エルナンデスは、愛弟子をそう表現する。
世界3階級制覇、32戦全勝24KOの戦績を築いてきた長身痩躯のサウスポーは、体格を生かしたアウトボクシングも、近い距離での攻防もできる万能型であることが特徴として語られる。だが厳密には、もっと柔軟かつ繊細にスタイルを変えられる。相手に応じて。あるいは、相手の出方に応じて。毎ラウンド“別人”になれる準備があり、その中でもっとも有効なスタイルを見極める。「インもアウトもできる、というのを軸にして、自分のボクシングはこうだと決めつけないようにしています。ボクシングは相手あってのものなので」と中谷は語る。
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ロサンゼルス・キャンプ中に重ねる無数のスパーリングは、その複雑なボクシングの土壌だ。
「必ず世界チャンピオンになる」。その夢ひとつを携えてルディのもとに身を寄せた少年時代から、トレーニングの中心にはスパーリングがあった。
「スパーは練習。試合じゃない。相手を打ち負かすのが目的じゃない。オフェンス、ディフェンスの技術を実際に使って自分のものにする練習だ」
それが当時も今も変わらぬ師の方針である。いつでも、どこでも、誰とでも。「こんなにスパーして大丈夫なのかな?」と本人が不安になるくらいに、ジムに誰かがいればルディは手合わせを申し込んだ。ラウンドごとに課題がある。うまくいくまで工夫する。言われたことをしっかり意識して動く分よけいに疲れたと、中谷は必死に食らいついた当時を回想する。
強面のルディが連れてくる日本の少年は、ロサンゼルス界隈で評判になった。「みんな戦々恐々だよ、ジュントが来ると。今日は誰が相手する? おまえやれよ、いや、おまえがやれよ、って」。のちにルディ門下に入り、いまは中谷の親友のバンタム級ボクサー、エイドリアン・アルバラードの証言だ。ジュントと初めて向き合った日に左一発で鼻を折られ、血まみれになった当の本人である。

