バレーボールPRESSBACK NUMBER
「圧倒的すぎる…」敵も恐れた“超人”田中瑞稀30歳の勝負強さ「でも苦しんでいた時期もあった」誰にも見せなかったキャプテンの涙〈SVリーグ決勝ウラ側〉
text by

田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2026/04/29 17:01
大阪マーヴェラスを2年連続でファイナルまで導いたキャプテン田中瑞稀(30歳)。連覇は逃したが、圧倒的な存在感を放った
頼れる大エースに羨望の眼差しを注ぐのは、同じポジションの福村だけでない。リベロの西崎愛菜も同様だ。レギュラーシーズン、チャンピオンシップでも好レシーブを連発する守護神は、福村と同じく「自分が辞めるまで、ミキさんに辞めないでほしいとずっと言っている」と笑う。点が獲れないリベロというポジションだからこそ感じる力強さを熱弁する。
「前からパワーも強いしスピードもあるとわかっていたけど、終盤に来てパワーが上がったのは見ていてもわかるし、スパイクも、どんな状況になろうとハイボールを打ち切って、点数につなげてくれる。後ろから見ていても、すごくカッコいいなって本当に思うし、背中が違います」
SVリーグ連覇を目指したSAGA久光スプリングスとのファイナルでも、そんな田中らしさ、そして“魔王”ぶりを何度も見せた。
ADVERTISEMENT
SAGA久光に先行されたGAME1の序盤、硬さが目立ち、サーブレシーブが乱れた。トスがネットに近い状況で、相手の2枚ブロックが揃う中でも、田中はわずかに空いたクロスのコースへ鮮やかに決めた。別の場面では長いラリーの最後にストレート側のブロッカーを狙った絶妙なブロックアウト。流れが相手に傾きそうな時こそ頼れる。まさに“大黒柱”と言える働きだった。
チームの迷いを消した田中の言葉
ただ、存在感を発揮するのはコートの中だけに限らない。
昨季は37勝7敗でレギュラーシーズン1位。圧倒的な強さを見せ、チャンピオンシップを制した。しかし今季は30勝14敗でレギュラーシーズンを4位で終えた。連敗スタートとなった開幕戦だけでなく、順位を争う終盤にも連敗を喫するなど苦しい状況が続いた。
このままで勝てるのか――転機になったのは、今年3月のデンソーエアリービーズ戦。連敗を喫した直後だった。
試合翌日は軽いトレーニングと治療、前節の課題や反省をフィードバックするのが常だが、選手だけで3時間に及ぶミーティングを行った。その意図を、田中が明かす。
「ちょっとよくないな、という空気が出ていたんです。不満や不安があるのに、出し切れていない。お互いが探り探りやっている感覚がすごくあったので『どう思ってる?』『どうする?』と、ちゃんと話し合わないといけないなと思って声をかけました」
効果はてきめんだった。自らの成功体験を重ねることで、勝てない現状に不安を抱く選手たちの迷いが田中の言葉で消えた。そう明かすのはセッターの東美奈だ。
「みんながみんな、こうしなきゃいけないという反省や改善点を持っていたんですけど、不安のほうが大きくてバラバラだった。でもそこでミキさんが『このチームならできるし、私はみんなを信じているから、この負けからつなげていこう』と言ってくれて、前を向けた。あそこから1つ、チームがギュッとなれた感覚がありました」

