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井上尚弥と中谷潤人を生んだ奇跡のイベント「U-15ジュニアボクシング大会」とは? 大橋秀行が語る創設秘話「周囲は皆、無謀じゃないかと」
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama(2)
posted2026/04/29 11:00
5・2決戦に挑む井上尚弥(左)と中谷潤人(右)。実は2人には「全国U-15ジュニアボクシング大会」経験者という共通点がある
大橋はボクシングの未来に危機感を募らせていた。長谷川穂積ら強い世界チャンピオンは現れていたが、これから先、世界との差が縮まるどころか開いていくと感じていた。
当時をこのように振り返る。
「海外のボクシングを見ていても、テクニックが日本と世界ではまるで違う。世界は子供時代からやっているからどうしても差が出てしまう。時間と技術というのはやはり比例しますから。それに日本には子供たちが実戦をやれる大きな舞台みたいなものがない。高校に入ってからボクシングを始める人が多く、中学生で始めていたらむしろ早いくらい。今の時代だと中学でも、もう遅いですよ。
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野球に置き換えて考えてみてください。高校から野球を始めたところで、おそらく甲子園に出るのは難しいですよね。みんな小さいころから野球をやっている。対してボクシングは高校で始めた人が、インターハイにどんどん出ていく。それじゃやっぱり世界との差は縮まっていかないよなってずっと思っていたんです」
小学生が練習に来ていても、途中でやめてしまう
大橋自身、中学からボクシングを始めて横浜高時代にインターハイを制覇。専修大学を中退して名門ヨネクラジムに入門し、国内ジム所属選手の世界挑戦連続失敗を21でストップさせて世界チャンピオンとなった。
ボクシング人気が低迷した冬の時代を経験してきただけに、底辺拡大には現役のころから課題意識を持つようになっていた。
「ヨネクラジムにもたまに小学生が練習に来ていたり、おじさんがサンドバッグを打っていたりしていました。でも目標とする大会もないから、みんな途中でやめてしまう。空手の道場なんて子供たちがいっぱいいるじゃないですか。なんかボクシングでも呼び込めないのかなって」
試合の計量に師・米倉健司会長と車で向かう際、いろんな話をしたという。目前に控えた試合の話やボクシングの話のみならず、ボクシング界の未来のことも。
<もっとボクシングをする人を増やしていくには、子供と一緒にやったり、年配の人がやれるようなことも考えていけばいいと思うんですよ>
師はこう返したそうだ。
<じゃあお前がそういう立場になったらやってみろよ>
その言葉はずっと心にあった。

