濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「自分以外はみんな敵だと…」うつ病を患った女子プロレスラーのその後…引退→復帰も経験した真白優希の思い「同じ病気の人たちにも試合を見てほしい」
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2026/04/25 11:00
うつ病と向き合いながらリングに上がる女子プロレスラー・真白優希
活躍のウラで、擦り減っていった心
キャッチフレーズは“摩訶不思議”。観客を笑顔にさせる才能があるのは間違いなかった。歩幅が小さくひょこひょこ歩く姿にも妙に愛嬌があった。変な話だが“へなちょこ”ぶりの表現が達者だった。
「でも当時は、本当に実力も体力も足りなかったですね。人から“すぐにやめちゃうんだろうな”と言われたこともあります。自分でも長く続くとは思ってなかったですし」
これという大技を食らったわけでもないのに立ち上がることができず、試合が続けられないこともあった。対戦相手に、技をしっかり受けろとリング上で注意されたことも。
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筆者は新人時代の真白について「今はへなちょこで面白いが、選手はどんどん力をつけていくから今のうちから見ておいたほうがいい」といった内容の記事を書いた。実際、少しずつではあるが力をつける。選手の大量離脱で団体が揺れる中、フリー時代の安納サオリとタイトルマッチで対戦したこともある。
活躍が目立ってきた中で、葛藤もあった。
「試合のスタイルと素の自分のギャップが埋め切れなくなってきて。どんどん心が擦り減ってしまいました」
「自分以外はみんな敵だと…」診断されたうつ病
強くなりたいし上を目指したい。そんな気持ちとは裏腹に“へなちょこ”な真白優希がウケているし求められる。デビューした団体だから練習生時代からのイメージがなかなか払拭できない。いつしか心を病んでいた。
「毎日、生きるのに必死でした。やっとの思いで生きてましたね。周りが何も見えないし、誰にも相談できない。自分だけで抱え込んでしまって。自分以外はみんな敵だと思ってました」
病院に通い、薬を飲みながら試合を続けていた。うつと診断された。
「何も考えられない状態で、このままではいつかケガするし、プロレスに対して申し訳ないなって」
2022年の大晦日、真白は引退試合を行った。会見で発表された引退の理由は「以前からの目標だった看護師を目指すため」。もともとプロレス生活には期限を決めていたという説明もあった。だがそれは建前でしかなかった。実際には心が限界を迎えていた。
「苦しさから解放されるためには、プロレスから離れるしかないと。でも自分のプライドで、それを隠したかったんです」

