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石川祐希、西田有志、高橋藍より早い…高校3年生が男子バレー日本代表“異例”の初選出「あの子は面白い」亡き名将も認めた逸材・一ノ瀬漣(17歳)とは何者か?
text by

田中夕子Yuko Tanaka
photograph byHiroyuki Nakamura
posted2026/04/19 11:01
バレーボール男子日本代表の登録メンバーに選出された一ノ瀬漣(17歳)。新年度は鎮西高校のキャプテンを務める
畑野監督の言葉に違わず、鎮西高は駿台学園の組織的なバレーボールを前になかなかセットを獲ることができない。ようやくセットを獲ったのは終盤になってから。前半戦ではブロックにかかることが多かった一ノ瀬のバックアタックのギアが明らかに増したときだった。
サーブで狙われても、レシーブした後にトスを呼ぶ。駿台学園の強打を切り返した後のラリーでも、一ノ瀬がトスを呼ぶ声は体育館に響いた。
踏み込んでからふわっと上がり、空中でもうひと伸びするような大きなジャンプから最高打点でボールをとらえ、文字通り、渾身の力で叩いて相手コートに突き刺す。堅守の駿台学園の壁をも破った一ノ瀬の活躍で待望の1セット奪取を果たすと、畑野監督は「獲りよった」と何度も言いながら、嬉しそうに笑っていた。
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練習試合を終えたばかりの一ノ瀬に、王者との対戦で何を学んだかを尋ねた。通用したものは何か。通用しなかったことは何か。すると、期待の1年生は「駿台学園は強かったです」と頬を緩めて声を弾ませた。
「最初はどこに打っても捕まるし、止められる。すごいなと思ったし正直怖かったです。でも、1本、もう1本と繰り返して打っていくうちに、抜けるコースも出てきたし、弾き飛ばすこともできるようになった。強い相手だからこそ、決まれば自分もこれだけやれると自信を持つことができたので、今日の練習試合はこれから高校で戦っていくうえでも大きい経験になりました」
バレーボールの概念を覆す能力
自信を得た一ノ瀬はさまざまな全国大会でその存在を強烈に印象づけた。高さとしなやかさを武器とする攻撃力はもちろんだが、それだけではない。身長190センチのアウトサイドヒッターはディフェンス面でもサーブレシーブの大半を担う。特にオーバーハンドレシーブのスキルには定評があり、守備範囲も広い。鎮西高の絶対的エースに留まらず、コートを支配するオールラウンダーでもある。
「最もボールを多く触るのはセッター」とよく言われるものだが、スパイクを誰よりも放ち、コートの中で誰よりも動いてボールを触り、おまけにサーブでブレイクを重ねる一ノ瀬を目の当たりにすると、バレーボールの概念すら覆されてしまう。
とはいえ、まだ高校生。身体の線は細く、世界で戦える戦術や知識を備えているわけでもない。それでも、将来への期待だけでなく、一ノ瀬が日本代表に選出されたことに心が昂る理由がある。
一ノ瀬が“エースの系譜”をたどる選手だからだ。


