炎の一筆入魂BACK NUMBER

「犬の小便みたいに投げているよ」先発転向のカープ栗林良吏をプロ初先発で“マダックス”に導いた石井弘寿コーチの言葉 

text by

前原淳

前原淳Jun Maehara

PROFILE

photograph byJIJI PRESS

posted2026/04/13 11:00

「犬の小便みたいに投げているよ」先発転向のカープ栗林良吏をプロ初先発で“マダックス”に導いた石井弘寿コーチの言葉<Number Web> photograph by JIJI PRESS

今季初先発で1安打完封を成し遂げた栗林

 もっとも、身についた癖は簡単には修正できない。栗林はトレーナーにも相談し、トレーニングから動作を変えるアプローチも並行して進めた。

 三浦真治アスレチックトレーナーは、修正ポイントに特化したメニューだけでなく、体の特性を踏まえたプログラムを提示した。

「彼の場合、軸足となる右足の使い方だけが課題ではなく、踏み込んだ左足のブレーキも弱かったんです。一塁側に流れたり、膝が曲がったりして力が逃げてしまう傾向がありました。軸足だけでなく、その力を受け止める左足のトレーニングを投球動作につながる形で取り入れてきました」

ADVERTISEMENT

 必ずしも課題点が、そのまま修正点となるとは限らない。軸足だけでなく、踏み出し左足への意識とトレーニングを併せたことで、投球動作の連動性向上につながった。

短期間で成し遂げた変化

 迎えたシーズン初登板。二軍で痛打された姿は、そこにはなかった。直球には球速以上の力と切れが宿り、変化球も生きた。広島の先発右腕が得意とする左打者の外角カットボールでカウントを整え、新たに習得したスライダーで空振りも奪えた。フォークも決め球としてだけでなく、カウント球としても機能した。9回1安打無四球無失点、華々しいスタートだった。

 続く前年王者・阪神打線を相手にしても、その投球は揺るがなかった。7回まで3安打無失点。侍ジャパンの森下翔太、佐藤輝明の両スラッガーから計3三振を奪い、無安打に封じた。初先発の快投がフロックでも、ビギナーズラックでもないことを証明した。

「不調に陥ってから時間がかからずに立ち直ることもありますが、1年以上かかる選手もいる。タイミングと相性もあるし、僕の場合は(指導やトレーニングが)自分に合うものだったことも大きかった」

 石井コーチはキャンプ中から、言葉をかけるタイミングを見極めていた。実績ある投手だからこそ、積み重ねてきたものを尊重しながらの介入だった。三浦トレーナーもまた、体の特徴を把握していたからこそ個々の特性に即したトレーニング法を提示できた。そして何より、栗林自身が彼らの言葉を信じ、やり抜いたことで短期間での変化を可能にした。

 短期間で劇的な変貌を遂げても、まだ最終形態ではない。次回登板は中9日と間隔を空ける配慮がなされた。先発としての戦いは、まだ始まったばかりなのだ。「先発栗林」は、まだ発展途上にある。

関連記事

BACK 1 2
#広島東洋カープ
#栗林良吏
#石井弘寿

プロ野球の前後の記事

ページトップ