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侍ジャパンPRESSBACK NUMBER
「スミちゃん(隅田知一郎)に申し訳ない気持ちが…」WBC“3戦目から出番がなかった”坂本誠志郎の献身「目を充血させて他国を研究」取材者が見たウラ側
text by

佐井陽介Yosuke Sai
photograph byHideki Sugiyama
posted2026/03/18 17:01
宮崎キャンプでの坂本誠志郎。ピッチクロック、ピッチコムへの対応と並行して、ライバル国の選手データを頭に叩き込んでいた
西武・隅田知一郎に抱いていた“申し訳ない気持ち”
WBCメンバーの大枠が固まりつつあった1月下旬、坂本は気を揉んでいた。西武・隅田知一郎が一向に選出されず、人知れず責任を感じていたのだ。
26歳のサウスポーは井端ジャパンの常連メンバーの1人だった。だが、昨年11月の練習試合・広島戦では2回2/3を9失点。ピッチクロックを意識するあまりに投げ急ぐ左腕の乱調を止めきれなかった捕手が、他ならぬ坂本だった。
「あのときの僕は流れを変えるきっかけを作ってあげられなかった。ピッチコムという機械でサインを出さないといけないから、指の出し方でリズムを変えることができない。ピッチクロックの制限があるから、なかなか間を作ることもできなかった。そんな後悔があったから、メンバー発表でなかなかスミちゃんの名前が呼ばれなくて、本当に申し訳ない気持ちがあったんです」
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それだけに、2月中旬に隅田の追加招集が発表されたときは心が揺さぶられた。
左アキレス腱断裂で出場を辞退した石井の代替選手としてのメンバー入り。阪神でもバッテリーを組む右腕の負傷にショックを受けていた時期、隅田招集の報は再び感情を高ぶらせる支えの1つとなったのかもしれない。
「ポテンシャルだけを見たらWBCでも間違いなく通用する投手。スミちゃんに普段通りのパフォーマンスを出してもらいたい、という思いは個人的にもあります」
2月の宮崎合宿中、男は言葉に力を込めていた。
だからだろうか。
隅田が1次ラウンド3戦目のオーストラリア戦で快投を披露した直後、坂本はベンチの中で安堵したような表情を浮かべていた。
左腕はこの試合で3イニングを7奪三振、被安打2で自責点0と躍動した。受け手はオリックスの若月健矢だった。
坂本は先発マスクをかぶった1次ラウンド2戦目の韓国戦で7回裏に代打を送られたあと、出番がないまま大会を終えた。隅田とバッテリーを組む機会は最後まで訪れなかった。

