将棋PRESSBACK NUMBER
藤井聡太相手に永瀬拓矢が“見たことがない仕掛け”を対局中に…本人は意図を淡々と語る一方で「評価値じゃないんです」高見泰地が驚愕した理由
text by

大川慎太郎Shintaro Okawa
photograph byKeiji Ishikawa
posted2026/03/18 06:01
王将戦第3局の永瀬拓矢九段。藤井聡太王将にどう挑んでいるのだろうか
「先手が飛車先の歩を切って、後手が雁木にする構想は藤井さんとのVS(1対1の研究会)で指されたことがありました」
え、そうなのか。もう藤井と永瀬のVSは1年半も行われていないから、かなり前の将棋になる。
「だから対藤井戦で採用するかはちょっと迷ったんですけど、この形になったら指す予定ではあったので」
ADVERTISEMENT
どこでそのVSの進行から離れたのだろうか。
「こちらが角道を止めた時に藤井さんは9筋の歩を突いてきましたよね。その手です」
先手が仕掛けやすくなっているのだという
20手目だ。19手目での前例は女流棋戦を合わせて4局あったのだが、この9筋の歩突きで、公式戦で初めて現れた将棋になった。
お互いに雁木の構えになっているが、先手だけ飛車先の歩を切っており、後手は9筋の端を詰めている。先手はどういうことを意識して指していたのだろうか。
「穏やかな展開になりやすいので、その時に先手が主張をきちんと持って指せるかどうかがポイントになります。できるだけ膠着状態にならないようにして、手持ちにした1歩をどれぐらい主張にできるかですね」
本譜の進行は、すでに先手が仕掛けやすくなっているのだという。
「私が1筋の歩を突いた手に対して藤井さんも歩を受けてきましたけど、これには角を6八に引けば攻めがありそうな感じなんです。だから1筋を突いた手には△6二銀として、▲1五歩△3一角というように組み合いを目指してくると思っていました」
見たことがない仕掛け…本人に意図を聞く
藤井が玉を6二に上がった手に対して永瀬がすさまじい仕掛けを見せたのだが、仮に△4一玉と盤面右辺に囲ってきたらどうなるのか。
「△4一玉には▲1五歩△同歩▲2四歩△同歩▲1五香△同香▲2四角で手になります。玉を右辺に近づけると、1筋を絡めて仕掛けが成立しやすい形かなと思いました」
そこで藤井は玉を左に囲ったのだ。
これに対して永瀬は9六に歩を突いたのである。藤井は自然に取った。先手は6八に角がいるので▲9五歩とフタをするのかと思ったら、なんと永瀬は9六の歩を香車で取ったのだ! そのまま香車で取り返されてしまうので、香損だ。9七に歩を打って取り返すことはできるが、そこに桂を動かすことになるので、将来△9六歩のキズが生じる。
とにかく、見たことがない仕掛けを永瀬は敢行したのだ。本局には大きなポイントが2つあって、1つ目がこの永瀬の開戦である。
まずは本人に意図を聞いてみよう。59分で仕掛けたが、これは永瀬からすると当然なのだろうか。

