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「プロ野球時代の貯金は消えたけど…人は変われます」元中日・前原博之が“新聞販売店”を開業していた…涙の修行、奮闘する今「カミさんに楽をさせたい」
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岡野誠Makoto Okano
photograph byNumberWeb
posted2026/03/30 11:01
中日で活躍した元プロ野球選手、前原博之は58歳の今、岐阜市の新聞販売店のオーナーとして奮闘している
「エアコンは、前に住んでいた家の子供部屋から持ってきましたけどね。かなりの額が掛かりました。10年経った今も回収できていません」
必死に生活「返済も残っている」
いずれ、その場所に家を建てようと考えていたが、新聞の購読者が減り続けているため、10年経ってもプレハブのまま仕事を続けている。
「新型コロナの時、大きなダメージを被りました。頼みの綱である宣伝のチラシが大幅に減ったんですよ。昔からの販売店は内部留保があるけど、ウチにはない。無利子無担保の支援制度を使い、銀行から2000万円を借りて、何とか凌ぎました。でも、今も返済は残っているし、住宅ローンもある。支払いだけで、毎月40~50万円は飛んでいきます」
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前原は15年間もプロとして戦い、引退後もコーチや球団職員などで働いた。元プロ野球選手として恵まれた境遇だった。しかし、その座が生涯続くわけではない。1年に100人ほど入団するNPBで、40年以上も野球を生業にできる人は、ほぼ皆無と言っていい。
「現役時代、引退後のことなんて何も考えていなかった。だから、お金も浪費した。野球からの切り替えは本当に難しかった。でも、人って変われると思いますよ。僕は高校時代、自分勝手な性格で、仲間から『サラリーマンに一番向いてないな』と言われていましたから。今は経営者の立場ですけど、アルバイト全員が幸せになれるように頑張らなくちゃいけない」
「カミさんに楽をさせてあげたい」
還暦手前になれば、病魔も襲ってくる。2月には狭心症の疑いのため、検査入院をした。それでも、妻と3人の子供のため、走り続けなければならない。
「頑張ってるでしょ? ははははは(笑)。カミさんには本当に世話を掛けていて、申し訳ない気持ちで一杯です。少しでも楽をさせてあげたい。今は難しいですけど、いつか一緒にハワイに行ける時間とお金ができればいいなって」
どんな境遇に置かれても、気持ち次第で、物事の見え方は変わる。苦悩の日々もあったのに、前原は笑顔で運の良さを誇っている。他人や家族の幸せを願いながら、前向きに仕事に取り組む男に、神は再び幸運を与えるに違いない。



