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中日から西武へ電撃トレード移籍「月50万円ぐらい食費に使ってました」前原博之が“34歳で戦力外通告”を受けるまで「星野さんから電話?ないです」
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岡野誠Makoto Okano
photograph byKYODO
posted2026/03/29 11:02
中日、西武でプレーした元プロ野球選手の前原博之
「大概の投手はいろんな球を持っていても、精度にバラつきがある。桑田は真っ直ぐ、カーブ、スライダー、シュート、フォーク、全部一級品なんですよ。だから、どのボールに絞っていいのか、全然わからなかった。山張りの僕には、厳しい相手でした」
「トレードだな」前原をイジった男も…
高木監督の退任は既定路線だったが、選手や球団の懇願もあり、続投に。しかし、95年の中日は開幕からつまずき、6月2日の試合後に高木監督が休養。指揮官はヘッドコーチの徳武定祐、二軍監督の島野育夫と目まぐるしく代わり、5位で終了。星野仙一の再登板が確実視されていた。
シーズン最終戦の後、前原が荷物をまとめていると、総務の本田威志が声を掛けた。
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本田:今日帰ったら家にいてくれ。
前原:え? なんですか?
本田:いや、いればわかるから。
横にいた清水雅治が「トレードだな」とイジってきた。自宅に戻ったものの、心は落ち着かない。テレビを付けても、総務の言葉が頭から離れない。数時間が経った頃、電話が鳴った。
本田:何の用件かわかるか?
前原:トレードですか?
本田:そうだ。
前原:どこですか?
本田:今は言えん。明日、来ればわかる。
翌日、愛車のアルファロメオで球団事務所に到着すると、見覚えのあるグロリアが駐車場に入ってきた。ミラー越しに、清水の顔が見えた。
「お互いに『あ~』って指を差し合いましたよ(笑)。トレードを宣告されたら、従わざるを得ない。中日に愛着もあったし、寂しかったですよ」
西武へ移籍ウラ側
高木監督就任の92年、清水は14盗塁、前原は球宴出場とブレイク。5年ぶり復帰の星野監督は2人をトレードし、西武から2ケタ勝利3度の村田勝喜、外野手の山野和明を獲得した。前指揮官の秘蔵っ子の放出は、見せしめのようにも思えた。
「人間なので、好き嫌いは絶対あると思います。まあ、仕方ないですよ。星野さんから電話? ないです。成績を残していなかったし、あるわけないですよ」
移籍先の西武は黄金時代を終え、松井稼頭央など新たなスターの育成が急務とされていた。

