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「もう1局指せる」藤井聡太23歳“崖っぷち”評価値30%台→逆転で初カド番をしのいだが…険しい表情のまま「窮地で立て直すのが」響く谷川浩司の言葉 

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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photograph by日本将棋連盟

posted2026/03/14 06:00

「もう1局指せる」藤井聡太23歳“崖っぷち”評価値30%台→逆転で初カド番をしのいだが…険しい表情のまま「窮地で立て直すのが」響く谷川浩司の言葉<Number Web> photograph by 日本将棋連盟

王将戦第5局の藤井聡太王将。初のカド番を見事にしのいだ

 そして後手の右玉囲いが整う前に、▲9六歩と突いて予想外の仕掛けを敢行した。部分的にはある手だが、実戦ではあまり見かけない。藤井は意表を突かれたようで、終局後に「戦機をつかまれてしまった」と語った。

 永瀬は先に香損したが、すぐに香を取り返した。その香を2筋に打ち、飛車と連係して敵陣突破を図った。その局面で1日目が終わった。

《永瀬60%台―藤井30%台》がずっと続いたが

 永瀬は入念な事前研究で対局に臨む。研究通りの展開なら早指しで進める。ただ本局の場合、▲9六歩の前の数手で少考を重ねた。

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「そんな筋は見たことがない」

 控室の検討陣にこう言わしめた手法は、対局中に思いついたようだ。

 藤井は2筋を破られたが、先手の飛車を取る返し技で応じた。そして9筋にと金を作って反撃した。永瀬は9筋に角を打って「準王手飛車」をかけた。飛車を取って後手玉に迫る厳しい手段がある。控室の検討では、その前に先手玉の守りを引き締める手が有力とされた。ただ永瀬はあまり考えなかったという。

 永瀬は敵陣に飛車を打ち、藤井の玉を追い詰めていった。控室の検討では寄せ切れるかどうか、きわどいとの声が出た。AI(人工知能)の形勢評価値は、《永瀬60%台―藤井30%台》がずっと続いていたが、その局面を境にして両者の点数が逆に入れ替わった。

 永瀬が藤井の玉に詰めろをかけた局面で、立会人の中村修九段(63)は△4二飛と自陣に打つ絶妙手を指摘した。果たして藤井がノータイムでその手を指すと、控室で感嘆の声が上がった。

 ちなみに中村九段は1986年、87年に王将を2期獲得した実績がある。若手棋士時代は粘り強い受けを得意にしていて、「受ける青春」という愛称がついた。

笑顔を見せず険しい表情だった

 永瀬は藤井の自陣飛車の受けを軽視していた。以降は懸命に後手玉に迫っていったが、藤井に着実に寄せられて勝ち味はなかった。

 最終的には藤井王将が逆転勝ちでカド番をしのいだ。終局時刻は17時14分。残り時間は、藤井が1時間23分、永瀬が9分。第6局は3月18、19日に愛知県名古屋市「名古屋将棋対局場」で行われる。

 藤井は2勝3敗と挽回したが、終局後は笑顔を見せず険しい表情だった。

【次ページ】 谷川浩司が語った「窮地」論とは

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