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ボクシングPRESSBACK NUMBER
井上尚弥vs中谷潤人「日本ボクシングは物事の進め方が本当にうまい」英国人記者が驚いたベストカード実現の背景「欧米の放送局も“KO集”をつくるべきだ」
text by

杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byHiroaki Finito Yamaguchi
posted2026/03/07 11:01
3月6日、記者会見で顔を合わせた井上尚弥と中谷潤人。世紀の一戦は『THE DAY やがて、伝説と呼ばれる日。』と銘打たれた
過去のメガイベントと比較するなら、“ボクシング史上最高級の一戦”として語り継がれる1981年のシュガー・レイ・レナード対トーマス・ハーンズ戦、“1000年に一度の戦い”と称された1999年のオスカー・デラホーヤ対フェリックス・トリニダード戦のような雰囲気がある。最近では2023年に行われたテレンス・クロフォード対エロール・スペンス戦に例えられるかもしれない。
これらの試合に共通するのは、いずれも“ベスト・オブ・ザ・ベスト”の頂上決戦だという点だ。最高のカードを語る時、必ずしも無敗同士である必要すらない。レナード対ロベルト・デュラン第1戦は間違いなく歴史的一戦だが、デュランはすでに1敗を喫してその試合を迎えていた。レナードはハーンズ戦のときに1敗していたが、それでもその階級でベスト同士の対決だったことに疑いはない。
今回もまさにそういったカードだ。この2人の場合はどちらも無敗で、複数階級王者であり、ともにパウンド・フォー・パウンドのトップ10に入っている。明らかに“ベスト・オブ・ザ・ベスト”の激突だ。そういった対戦が実現する時、ボクシングは“単なるボクシング”という感覚を超越し、巨大なスポーツイベントになる。こんな瞬間はそう頻繁に訪れることはない。
「日本ボクシング界は物事の進め方がうまい」
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昨年12月、私はサウジアラビアのリヤドを訪れ、イノウエとナカタニが当地で行った前哨戦を現場取材した。その時点では、この2人が本当に雌雄を決することになると100%確信していたわけではなかった。しかし、日本のボクシング界は物事の進め方が本当にうまい。最近ではリング外の混乱でエニス対オルティス戦の実現が怪しくなっているが、世界ボクシング界ではつきもののそのようなクレイジーな政治的駆け引きは日本リングではそれほど頻繁には起こらない。
そんな背景を考えれば、イノウエ対ナカタニ戦の実現に驚くべきではないのだろう。このようなカードがスムーズに成立することが、日本がいかに素晴らしいボクシングの震源地であるかの根拠でもある。特に私個人にとって、今、日本は世界最高のボクシングの拠点だ。
2人の偉大なボクサーのキャリア、レガシーを左右する戦いが行われるその日、世界中のボクシングファンの視線が日本に集まることになる。私はこの試合がより広く露出し、より多くの人が観る機会を得ることを望んでいる。先ほども言った通り、巨大なスポーツイベントなのだから。ただ、ここで結論を言うと、この試合はフロイド・メイウェザー対マニー・パッキャオ戦のように世界を動かす現象にはならないのだろう。


