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フィギュアスケートPRESSBACK NUMBER
「強くならなければと思いました。彼を支えたかった」三浦璃来の言葉に米メディアも感銘…“フィギュア大国”でも話題のりくりゅうペア「本当の強さ」
text by

一野洋Hiroshi Ichino
photograph byAsami Enomoto / JMPA
posted2026/03/03 17:07
ミラノ五輪で金メダルを獲得したりくりゅうペア。海外報を読み解くと、国内とは少し違った2人の評価が見えてきた
特に目を引くのは、三浦の位置づけである。
木原がショートプログラムのミスでメンタル的に崩れつつあった中で、「ペアを精神的に支えたのは彼女だった」と描かれる。
「強くならなければと思いました。彼を支えたかった」
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そんな三浦の言葉が引用され、さらに身長4フィート9インチ(約145cm)という具体的な数字まで記される。身体的な小柄さと、精神的な強さを対照的に浮かび上がらせる書き方は、いかにもアメリカ的だ。
アメリカが報じた「関係そのものの強さ」
りくりゅうの2人が自国の選手ではないからこそ、アメリカの報道が描いたのは献身によるロマンではなく、状況に応じて「役割を交換できる」パートナーシップのクオリティだったのではないか。崩れた者をもう一人が補完し、別の瞬間にはまた立場が入れ替わる。どちらか一方の強さではなく、「関係そのものが機能していることが強さ」だと記事は伝えているのだ。
『AP通信』で報じられた記事では、より抑制された筆致で2人の姿が描かれている。涙のシーンは前面に出ず、代わりにフォーカスされるのが、動作の変化だ。
ショートプログラム後の木原は「emotionless(無表情)」だった。しかしフリーの得点が発表され首位に立った瞬間、「erupted with a roar(雄叫びを上げ)」、そして6.90点差を逆転しての金メダルが確定すると「quietly dropped to his knees and hugged Miura(静かにひざまずき、三浦を抱きしめた)」。
無表情から雄叫びへ。そして、ひざまずく。涙や笑顔といった分かりやすい感情で表現するのではなく、身体の動きで物語を語る書き方だ。木原の感情の爆発を強調しながらも、最後は必ず2人の動作に収束させる。勝者は“彼”ではなく、あくまでも“組織=ペア”なのである。
選手たちが最も混乱したであろうショートプログラムからの流れの中で、フリーで三浦と木原のペアは「impossible to beat(打ち破れない)」な得点を出した。ただ、それは「圧倒的な個」という存在としてではなく、揺れ動く流れの中で最も「安定していたペア」だという報じられ方だ。歴史的快挙であるのは事実ではあるが、それ以上に競技構造の中で必然的に頂点に立った存在として描かれている。

