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誰が何のために規則を“変えた”のか…各マニュファクチャラーの主張入り乱れる「圧縮比トリック」の真の問題点 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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posted2026/02/17 17:00

誰が何のために規則を“変えた”のか…各マニュファクチャラーの主張入り乱れる「圧縮比トリック」の真の問題点<Number Web> photograph by HONDA

ホンダが今季投入する新たなパワーユニット「RA626H」。新規定に準拠し、電動パワーとエンジンパワーの比率が約50:50となる

 そのPUマニュファクチャラーはメルセデスだと言われているが、開発するにあたって国際自動車連盟(FIA)に確認をとっていることから、彼らは合法性に自信を持っている。

 ホンダはこの件に関して公の場で異議を唱えてはいない。本田技研工業の三部敏宏社長は、こう語る。

「レギュレーションというのは、すべてが細かく書かれているわけではありません。したがって、圧縮比に限らず、今後新しいレギュレーションの中でさまざまな技術の可能性があるので、PUに関して知恵を絞っていくこともレースの一部だと思います。それぞれの知恵が正しいのかそうでないのかを裁定するのがFIA。ホンダにもいろんなアイディアもあるので、それを開発していくときにはその都度、FIAに尋ねて、OKだということを確認してから開発を進めていくことになります」

誰が何のために規則を変えたのか

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 ただし、今回の「圧縮比トリック」は冒頭の言葉の示す範疇を超えている。「ルールを最も理解した」のがメルセデスで、それ以外のマニュファクチャラーが「ルールをただ守る者」として片付けられる話ではないからだ。その理由は、昨年10月にFIAが発行した技術規則の第5条4項3の改訂にある。

 それまでは「エンジンのシリンダーの幾何学的圧縮比は、常に16.0を超えてはならない」となっていたものに、「その測定方法は常温で」という注釈が付け加えられた。まるで、違法の疑いがある圧縮比トリックを合法にするため加筆したと思われても仕方がない変更で、メルセデスのライバルたちが異議を申し立て、緊急会議が開かれる事態に発展している。

 こうした混乱を受け、FIAのシングルシーター部門を統括するニコラス・トンバジスは、一部のチームがエンジン作動時に圧縮比を高めている可能性を事実上認めたうえで、「ライバルたちが法廷やスチュワード室で対決するのではなく、コース上で競い合えるよう、開幕までにこの論争に決着をつけたい」と発言。今季開幕戦オーストラリアGPでの抗議や、その後にFIA国際控訴裁判所で審理するような事態に発展するのを回避したい姿勢を見せている。

「ルールを最も理解すること」は、「ルールを都合よく変更して良いこと」には決してならない。

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