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「阪神の守護神はなぜ自分なのか…」石井大智でも及川雅貴でもなく…岩崎優34歳が”9回を任されるワケ” 藤川球児監督も明言「基本的には岩崎です」
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佐井陽介Yosuke Sai
photograph byHideki Sugiyama
posted2026/01/31 11:06
阪神の守護神・岩崎優が「なぜ自分が9回を任されるのか」を自問自答しつつ、率直な心情を明かした
「これは自分が悪いんですけどね」
岩崎は誤解を招かないように前置きした上で、昨季の反省点を思い返した。
「捕手に任せすぎていたところもあったんです。こっちのボール、コースの方がいいかなと感じても、捕手がサインを出してくれているのだからこのままでいいかと投げて、実際に打たれてしまったこともありました。もちろん、それは捕手のせいではありません。他のリリーフ陣ともよく話すんですけど、投手にはマウンド上でひらめきみたいなものがあって、それが結構当たったりするもの。『ここでこのボールを投げたら絶対にいける』と感じたら、今年は自分の考えをきちんと捕手に示していかないといけないと思っています」
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このままではいけない。
危機感が今年も左腕の心身を突き動かしている。
なぜ、タイガースの守護神は岩崎なのか
年明けからは地元の静岡市内にある草薙球場で合同自主トレを続けている。高橋遥人に桐敷拓馬、及川雅貴。チームメイトの後輩左腕3人を引き連れ、例年になくランメニューに明け暮れる日々を送る。最大の特長ともいえる柔軟性、可動域をキープするため、回旋系のストレッチにも尽力。近年はチェンジアップやスライダーが変化球の主要球種となる中、ひそかに新球の習得も視野に入れているそうだ。
「何年か前、オープン戦とかシーズンの最初にちょっとだけ投げていたツーシーム系のボールとか。少し考えているところはありますけど、これは実際に試合で投げてみて、打者の反応も見ながらになりますかね。投げられても使い方が分からなければ意味がないし、新しい球種を覚えると、どうしてもそのボールに頼ってしまう可能性もありますから。新しいおもちゃばかり触ってしまう子供みたいになるのもダメなので」
妥協なき向上心が少し照れくさくなったのか、左腕は最後、冗談めかして微笑んだ。
なぜ、タイガースの守護神は岩崎なのか。
周囲の人間はおそらく何個でも理由を答えられる。
数々の修羅場をくぐりぬけてきた、冷静かつタフな精神力。いつだってチームの勝利を最優先できる献身性。胸に秘められた、類まれな勝負根性。そして、仲間がついていきたくなる姿勢、努力。
それらの全てを理解しているから、現役時代に伝説のリリーバーだった藤川監督をはじめ、歴代の指揮官たちは皆、左腕を9回のマウンドに送り出すのだろう。
ただ、当の本人にそこまでの自負はない。
「タイガースが強くあり続けるためには、今年も新しい誰かが出てこないといけない。それは先発陣もリリーフ陣も同じ。そんな新戦力に負けないようにやっていく中で、年齢が上の人たちの力もまた上がっていくわけです。自分自身、大きなケガをしたり抑えられなくなったりしたらマウンドに立てなくなるという危機感はあります。でも、そこに負けないように自分が頑張ればいいだけだとも思っています。能力がある、抑えられる人を使うのが監督。新しい選手に押しのけられたら、それまで。もちろん、そうなるつもりはありませんけどね」
現時点で通算120セーブ、157ホールド。今季はNPB史上5人目、球団では現役時代の藤川監督以来2人目の「150セーブ150ホールド」も視野に入るほどの立場にいるが、ベテラン左腕はとにかく謙虚な姿勢を崩さない。
なぜ、自分が9回を任されるのか。
まだ納得のいく答えを導き出せていない以上、34歳になった今も、地道にゼロを積み重ねていくしかないのである。


