濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「沙弥様の可愛い顔を汚くしやがって」上谷沙弥vs安納サオリはなぜ“両者号泣”の名勝負になったのか? 試合後に涙を流した“それぞれの理由”
text by

橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byEssei Hara
posted2026/01/13 11:00
上谷沙弥vs安納サオリのタイトルマッチが名勝負となった舞台裏とは
地上波では“令和の極悪女王”と呼ばれる上谷がチェーンを持ち出すと、安納はそれを奪って首を絞める。雪崩式フランケンシュタイナーを食らうと、直後に同じ技で反撃。顔面蹴りの打ち合いも譲らない。
やられたら絶対にやり返す意地の張り合いの中で、上谷は鼻から出血していた。安納も頬が腫れた。新技の変形スープレックスも出した安納だったが、上谷はカウント2でクリア。大技ラッシュを制して上谷が防衛を決めた。紙一重の勝利に見えたが、その紙一重が大きいようにも思えた。
「沙弥様の可愛い顔を汚くしやがって、この野郎!」と上谷。安納は「いつもと変わらんて」と返す。リング上ではあくまで強気だった2人。上谷はこんなアピールも。
ADVERTISEMENT
「この1年いろんなことがあったけど、あらためて分かったことがある。私の生きる場所はスターダムのリングってことだ!」
試合後に2人が“号泣”したそれぞれの理由
インタビュースペースでの上谷は号泣していた。試合後に涙を見せることは珍しくない。その感情の豊かさが魅力でもある。しかしこの日はいつも以上。溢れる気持ちを堰き止められなくなったようだった。
「この1年、いろんなことがあって毎日気が狂いそうで、逃げ出したいこともあったけど。自分から逃げなかったしプロレスと向き合い続けた。だからこそ誰も手にしてないものを手に入れることができた。私はこれからもプロレスのために生きる!」
目指していたこととはいえ、急激な注目度アップに戸惑いがないわけがない。生放送のスタジオで芸能人に囲まれ、SNSのフォロワーも激増。たくさんの新しいファンに見られながらビッグマッチのメインを務める。他の誰も経験できない充実した日々であり、気を張りっぱなしの毎日でもあったはずだ。
感情が抑えられなかったのは敗れた安納も同じだった。リングを降りて同期のなつぽいの顔を見た瞬間、声をあげて泣いた。
「恥ずかしい姿を見せてしまいましたね。今まで試合で泣いたことなんてなかったのに。お客さんが見ているところで“安納サオリ”を貫けなかったのが悔しいです」



