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「沙弥様の可愛い顔を汚くしやがって」上谷沙弥vs安納サオリはなぜ“両者号泣”の名勝負になったのか? 試合後に涙を流した“それぞれの理由” 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byEssei Hara

posted2026/01/13 11:00

「沙弥様の可愛い顔を汚くしやがって」上谷沙弥vs安納サオリはなぜ“両者号泣”の名勝負になったのか? 試合後に涙を流した“それぞれの理由”<Number Web> photograph by Essei Hara

上谷沙弥vs安納サオリのタイトルマッチが名勝負となった舞台裏とは

安納が感じた“意外な反応”

 上谷戦の翌日、あらためて安納に話を聞いた。プレッシャーに強いと自負していた安納だが、この日は「これまでに感じたことがないものがありました」。

 開始直後に発生した“サオリ”コールははっきり聞こえていたと言う。

「意外でした。上谷への声援が大きいだろうと思っていたので。だから“えっ”と思ったけど、この声に応えなきゃと気が引き締まりましたね」

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 リング上での攻防は、上谷との“会話”だった。

「技は台詞」

 演劇の世界からプロレスに挑戦してきた安納は常にそう言う。

「言葉はかわしてないけど、技で伝わってくるものがありましたよね。打撃一つにしても、立ち上がってくる姿とか顔、声にしても。上谷から“技という台詞”が伝わってきたし、私も返そうとして。それがどんどん膨れ上がっていった試合でした」

 インタビュースペースでの安納は、こんなコメントを残した。

「上谷が背負ってるものだったり人を惹きつける魅力。あの子は私にないものをたくさん持ってる。私はあの子にはなれない。でも、私は私のやり方でプロレスを届けたい。私は無愛想かもしれへん。ファンサービスもしないし笑顔も振りまかへん。手も振らへん。だけどプロレスが大好き。これからも見ていてください。私は諦めないから」

上谷と安納は何をぶつけ合ったのか?

 上谷は「プロレスのために生きる」と泣き、安納は「プロレスが大好き」だと前を向いた。アイドル志望だった上谷。安納は「10年前は売れない役者でした」と会見で語っている。そんな2人が満員の両国国技館、そのメインイベントでベルトを争った。プロレスに“救われた”と言ったら大げさかもしれないが、今の上谷沙弥と安納サオリはプロレスがなければ存在していない。

 安納に上谷の強さについて聞くと、こう答えた。

「プロレスが好きということ。プロレスを変えたくて、上谷沙弥というブランドを背負っている。そこが強いと思ったし、同じ感情が自分にもあるなと」

 上谷と安納は激しく技を出し合いながら“私のほうがプロレスが好きなんだ”と叫んでいたのかもしれない。そう思ったのは両国大会の翌日、12月30日のOZアカデミー後楽園ホール大会だ。安納はこの団体のシングル王者であり、スターダム入りの前からレギュラー参戦している。昼興行だから上谷戦のわずか半日後、凶器の使用が認められる特別ルールで安納は勝利した。タッグを組んだのは尾崎魔弓。対戦相手はスターダムの刀羅ナツコと琉悪夏だ。この2人も前夜、両国大会に出場しタッグ王座を防衛している。

【次ページ】 「働きすぎってことだわ」

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