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ボクシング堤聖也なぜ“激闘”が多いのか?「弱い相手とやって長く王座にいるつもりはない」ドネア戦前に明かす“1995年組”への劣等感
text by

杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byHiroaki Finito Yamaguchi
posted2025/12/15 11:00
2025年2月、比嘉大吾とのリマッチで流血しながらも防衛を果たしたWBA世界バンタム級王者・堤聖也(29歳)
“1995年組”の充実に関して、ボクシングファンにはもう説明の必要もないだろう。田中恒成、比嘉大吾、山中竜也、井上拓真、ユーリ阿久井政悟など、多くの世界王者を輩出してきた。堤がノニト・ドネアと対戦する12月17日には桑原拓がWBO世界同級王者アンソニー・オラスクアガに挑戦し、世界選手権金メダリストでもある坪井智也のさらなる躍進も期待される。この世代の活躍はまだまだ続きそうな予感がある。
「激闘」が生まれる理由
そんな中で、堤は大きな注目を集める存在ではなかった。九州学院高では全国3位が4回、平成国際大では国体2位とアマチュアでも活躍したが、同学年の田中、拓真には勝てなかった。プロ転向後も6、7戦目に2試合連続ドローを経験するなど、華の“1995年組”の中でも遅れて出てきた存在という印象がある。上記の「劣等感があった」という言葉に代表されるように、堤は自身が世界王者になった今でも、同世代の強豪たちと比べて「能力的には劣っている」という気持ちを隠そうとしない。
逆に言えば、そんな思いが根底にあるからこそ、あの果てしない激闘が生まれるのだろう。“1995年組”の中でも自分が強くないと感じているからこそ、それだけの準備ができる。2023年12月の穴口一輝との日本タイトル戦では多くのラウンドでポイントを取られながら、4度のダウンを奪って判定勝利。昨年10月、“1995年組”のトップランナーだった拓真を手数で上回り、バイタリティでポイントを稼いで魂の判定勝利を飾った。今年2月には盟友・比嘉大吾とのリマッチで9回に先制ダウンを奪われながら、逆にダウンを奪い返して引き分け防衛を果たした。
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堤の試合を見ていると、そのスタミナと飽くなき勝利への執念に驚嘆せざるを得ない。ダメージを受けてもパンチのキレや威力が落ちない底力は、明らかに練習量のたまもの。自己評価は高くないことを感じさせる堤だが、ほぼ唯一、試合前に積み上げてきたとてつもないハードワークを語る時だけは自分自身に誇らしげだった。



