第102回箱根駅伝(2026)BACK NUMBER
“鉄紺”のエース候補、東洋大学の松井海斗が1年目の蹉跌を乗り越えて証明する「ゲームチェンジャー」のポテンシャル
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藤井みさMisa Fujii
photograph byYuki Suenaga
posted2025/12/19 10:01
10月の出雲駅伝1区でようやく駅伝デビューを果たした松井海斗
そして10月の出雲駅伝1区で、ついに大学駅伝デビューを果たした。酒井監督は松井に「流れを作り出す」役割を期待したが、激しいペースの上げ下げに翻弄され、最後のスパートのタイミングで置いていかれた。区間賞を獲得した中央大学・岡田開成は同じく2年生。その岡田からは23秒離された区間11位だった。 松井は出雲駅伝に臨むにあたり、自分の調子が上がってきているのを感じていた。
「勝つレースをしようと思っていて、その中でだいぶプランは立てられていました。それだけに悔しさが残るレースになってしまったかなと思います」
松井の武器は酒井監督も評価するとおり「集中力と冷静に周りを見られる力」。しかし出雲駅伝では、その良さが出なかった。松井自身も「中盤のレース展開でいつもの冷静さを持てなかったことが、後半のラストスパート合戦の前にうまく動き出しできなかった原因だと思います」と敗因を語る。
酒井監督は今後を見据えて松井の“初駅伝”を総括した。
「東洋大にはゲームチェンジャー的な存在がいませんが、距離が短い出雲駅伝ではやはり一度は流れを作り出すことが必須です。そこで1区の松井であと20~30秒いきたかったという目的がありました。これまで駅伝に1本も出ていなかったので、長い目で見れば苦い経験がいい経験になったと言えるようにしていきたい」
“独り立ち”を期す箱根駅伝
駅伝デビュー戦は悔しい結果に終わった松井だが、今は練習を継続できていることで長い距離の練習でも「やってやるぞ」と前向きに捉えられるようになった。11月の上尾シティハーフマラソン(上尾ハーフ)では、タイムを持っていないため後方からのスタート。加えて折り返し地点で車両が接近するアクシデントがあり、61分44秒の9位だった。「順位というよりは楽しんで走ろうと思っていたので、そこまで悔しさはないです」と言う松井は、ハーフの距離に関してはいい感覚を得たように見える。
箱根駅伝で走ってみたい区間は「1区か2区」。「高校の時から1区をやってきているので、スタートからのレース展開は自分の得意分野だと思っています。やはり集団からの抜け出しなどは、チームに勢いをつけるという意味でもやっていきたいと思います」と言いつつ、上尾ハーフの経験から「前を追う展開も感覚的に良かった」とも口にする。
「(前走者が)前の方からきても、後ろの方からきても粘りの走りをできるだろうという点で、2区も経験してみたい。上尾ハーフの61分44秒を(箱根駅伝2区の23.1kmに)換算すると67分台。それだと区間10番以降というレベルになるので、もっと戦える力をつけていかなきゃいけない」
前回の箱根駅伝では、同学年の迎暖人、内堀勇、宮崎が走った。松井と合わせて4人が今後の主力となっていくことは間違いないが、「4年生に引っ張ってもらっている中で、のびのび走れているのが自分たち」と松井は現状を冷静に見ている。頼れる4年生が卒業した後には、「鉄紺のエース」として独り立ちが求められる。
エース、そしてゲームチェンジャーとなるポテンシャルは十分の松井。今回の箱根駅伝で、どこまで力を示せるか注目したい。


