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「ありがとう、ずっと一緒にいてくれて」フェルスタッペンの感謝が物語る、最速ドライバーとホンダが互いを鍛えた7年152戦
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尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images / Red Bull Content Pool
posted2025/12/11 06:00
5年連続の王座は逃したものの、アブダビGPに勝利し有終の美を飾ったフェルスタッペン
「エンジンを変えることで少しでも状況が改善されるのであれば、交換するしかない」(折原)と判断したホンダは、使用済みエンジンの中から一番状態のいいものを選択した。ペナルティを受けずにレースに臨んだフェルスタッペンはスタートで2台のマクラーレン勢に割って入り、プレッシャーを与えて逆転勝利。最終戦に望みをつなげた。
「ホンダは常にドライバーに敬意を持って接してくれるから、気がついたことはなんでも言うことができた」と語ったフェルスタッペンからの要求は、ホンダにとってもかけがえのない財産となってきた。
「勝つために、フェルスタッペンからはさまざまな要求がありました。150戦以上やってきたということは、150回以上の要求があったということです。それはハードウェアはもちろんですが、ソフトウェア(現場でのセッティング)も150戦以上の要求があり、その積み重ねがあったからこそ、われわれのPUが成長できたことは間違いない事実です。その要求に応えるためにエンジニアやメカニックも鍛えられました。今日まで一緒に戦ってくれたマックスには感謝しています」(折原)
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5連覇で有終の美を飾ることはできなかったが、勝つためにどんなことでもやるという精神を最後まで貫いたフェルスタッペンとホンダに悔いはなかった。
忘れられないホンダとの記憶
ホンダとともに戦った152戦の中で、フェルスタッペンにとって忘れられないレースが2つある。ひとつはホンダとの初勝利となった2019年のオーストリアGPだ。
「復帰後、しばらくホンダはトラブルと性能不足に苦しんでいた。でも、その厳しい月日がホンダを鍛え、強くして、いまではF1界で最強のエンジンになった。そのエンジンで挙げた最初の勝利は忘れることができない」
フェルスタッペンがもうひとつホンダとのレースで特別だと語るのが、21年の最終戦アブダビGPだ。
「これは僕にとって初のタイトル。何度、獲っても、最初の記憶は常に特別だ」
19年に始まったフェルスタッペンとホンダの旅は152戦目に思い出の地、アブダビで終焉した。
「ホンダとともに過ごした年月を僕は永遠に忘れない」
そう言って、フェルスタッペンは「HONDA」のロゴが刺繍されたレーシングスーツを脱いだ。

