- #1
- #2
ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
長谷川穂積がズバリ指摘「これまでの相手と井上拓真ではレベルが違った」那須川天心に“打開策”はなかったのか?「キャリアの差が出たというしかない」
posted2025/12/02 17:03
井上拓真が那須川天心に判定で勝利したWBC世界バンタム級王座決定戦。元3階級制覇王者・長谷川穂積氏はこの一戦をどう見たのか
text by

渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Takuya Sugiyama
長谷川穂積が感じた井上拓真の「有利な材料」
戦前の予想は拮抗していた。拓真は幼少のころからボクシングに親しみ、アマチュア、プロで豊富なキャリアを積んできた。一方の那須川はプロボクシングのキャリアこそ7戦と浅いものの、キックボクシングを中心とした長い格闘技キャリアをバックグラウンドに持ち、その潜在能力が高く評価されていた。
長谷川さんも当初はどちらが勝つか分からなかったという。
「最初は五分五分の予想でした。天心選手が勝つなら、距離をキープして、持ち味のスピードでポイントアウトというボクシング。試合の1カ月くらい前までは、こういう展開があり得るのかなとぼんやりと思っていました。ただ、拓真選手が坂井優太選手(大橋)、堤麗斗選手(志成)とスパーリングをしていると聞いて、これはちょっと分からないなと思ったんです。2人とも若い選手ですが、スピードがあって技術もある。相当にレベルが高い。スパーリングの相手が強ければ強いほど成長できるし、学びもある。これは拓真選手にとって有利な材料だなと思いました」
ADVERTISEMENT
坂井は高校時代にアマ7冠を達成し、昨年6月のデビューから5連続KO勝ちをマークしている長身サウスポーだ。アマ時代に世界ユース選手権で優勝している堤はプロ3勝2KO。ともにプロのキャリアは浅い若手だが、あまたのホープの中でもスペシャルと呼べる存在だ。長谷川さんはこの2選手とのスパーリングが拓真にプラスに働くのではないかと考えた。
実際に試合が始まると最初の2ラウンドを取ったのは那須川だった。初回終了間際に左オーバーハンドをクリーンヒットさせ、2回には左アッパーから右フックのコンビネーションで拓真にダメージを与えた。
「スタートから2人ともいい動きをしてましたけど、より良かったのは天心選手でした。うまく距離を操って、最初の2ラウンドをはっきりと取りました。このままいけば天心選手が判定勝ちするのかな、と思わせる内容でした」

