第102回箱根駅伝(2026)BACK NUMBER
“速さと強さ”を発揮できるか…9年ぶりのシード権獲得へ向け、神奈川大学のエース・宮本陽叶が4度出場の箱根駅伝予選会で得た経験値
posted2025/12/11 10:01
前回の箱根駅伝でエース区間の2区を務めた宮本陽叶。今回も2区での起用が予想される
text by

生島淳Jun Ikushima
photograph by
Yuki Suenaga
神奈川大学の課題。それは他校が力のある選手を投入する往路、特に1区、2区でレースの流れに乗れるかどうかにある。これは神奈川大が抱えてきた長年の課題でもある。
神奈川大が最後にシード権を獲得したのは2017年の第93回大会のこと。この時は1区の山藤篤司が区間5位と流れに乗り、続く2区で鈴木健吾(現・男子マラソン日本記録保持者)が区間賞を獲得して首位に立った。そのまま好位置をキープして往路では6位。復路に入ってからは順位を上げて、総合5位に入った。実に12年ぶりのシード権獲得だった。
しかし、その後は苦戦。1区で出遅れてしまい、流れに乗れないレースが続いた。それでも2021年の第97回大会では総合順位は13位だったものの、往路では8位と健闘。この時は1区で呑村大樹が区間4位でまとめると、続く2区の井手孝一が区間9位で走り、そのまま往路を8位で走りきった。
つまり、1区の駆け引きに対応できる選手と2区での速さと強さを兼ね備えた選手がいれば十分に戦えるし、シード権の復権も現実的なものとなってくる。
今回、鍵を握るのが2年連続で2区を任されると予想される宮本陽叶(4年)だ。出身校である洛南高の同級生には、佐藤圭汰(駒澤大学)、溜池一太(中央大学)と大学でもエースに育った選手がいる。
宮本は高校時代から「将来はマラソンがやりたい」と考え、鈴木健吾への憧れもあって、神奈川大を進路に選んだ。トラックよりも、ロード志向だったのだ。しかし宮本は、箱根駅伝に関連するレースでは厳しい体験の連続だった。
エースが直面した試練
「1年生の時は箱根駅伝予選会で、1時間05分05秒のタイムでチーム内5位にまとめられたのですが、神奈川大として予選会を突破できず、箱根駅伝本選を走ることができませんでした。先輩たちに申し訳ない思いでいっぱいでした」
2年生になって成長を見せ、箱根駅伝予選会では1時間03分09秒でチーム内3位となり、主力の一角を担うようになった。第100回大会ではいよいよ本大会に出場したものの、4区で区間21位の苦しい走りとなってしまった。このレースを宮本は「ただただ、つらいだけの体験でした」と振り返る。
走り出すと、思ったように体が動かなかった。
「気温が低く、低体温症になってしまいました。なかなか身体が動かず、つらかったです。それでも、なんとか仲間にたすきをつなげられて良かったです」


