第102回箱根駅伝(2026)BACK NUMBER
「必死に耐えて後ろにつなげたい」日本体育大学・平島龍斗が最後の箱根駅伝に期す覚悟と頼もしき同期への思い
posted2025/12/10 10:01
箱根駅伝予選会を総合8位、チームでは一番手で走りきった平島龍斗
text by

杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Yuki Suenaga
チームスタッフが計測した総合タイムは出場圏外の11番目。箱根駅伝予選会の会場に重たい空気が流れるなか、日本体育大学の面々は祈るような気持ちで結果発表を待っていた。
ぎりぎりの9位通過のアナウンスが聞こえてくると、大粒の涙が頬を伝い、気づけば止まらなくなった。継続中の記録では最長の78年連続78回目の本選出場。うれしくて、ほっとしただけではない。自身4度目の出走となった平島龍斗(4年)の胸には、悔しさも込み上げてきた。日本人学生中2位(総合8位)となるチーム1番手の1時間2分6秒でフィニッシュしたが、この結果に納得できなかったのだ。
「エースとしては不甲斐なくて⋯⋯。うちには留学生ランナーもいないですし、僕が日本人学生1位になり、タイムをより稼げていれば、みんなもあれほど不安にならなかったと思います」
4年目を迎えて、意識は高くなったという。すべては目標に掲げる箱根駅伝のシード権獲得からの逆算である。前回大会は1区で区間3位と好走したものの、あらためて思い返せば、物足りなさを覚えた。
「ある程度、いい順位でしたが、自分のところでもっと貯金をつくれたと思います。1区で独走した中央大学の吉居(駿恭・現4年)について行くだけの走力を僕が持っていれば、また違う展開になったかもしれません。あのときは自信がなくて、行けませんでした」
箱根駅伝が終わったあと、自らに言い聞かせた。今季は他大学のエースに負けない。脚力で仲間を引っ張り、まず結果で見せる。そして、迎えた2月の日本学生ハーフマラソン選手権では1時間1分2秒と力走し、6月の日本学生陸上競技対校選手権では5000mで13分42秒84の好タイムを出した。いずれも自己ベストを更新。現チーム内の最速タイムをマークし、貫録を示した。
駅伝シーズンで得た収穫と課題
上半期で自信を深めて、学生最後の駅伝シーズンへ。予選会から2週間後の全日本大学駅伝では、スピード自慢が集まるエース区間の2区を担当。学生三大駅伝では初めてスターター以外の役割を任された。1月の本番に向けての予行演習だった。成長著しい荻野桂輔(2年)から5位でたすきを受けとると、途中まで先頭集団に食らいつきながらも、後半は遅れを取って順位をひとつ落としてしまう。予選会の疲労が残っていたものの、言い訳はしなかった。チームは11位に終わり、区間7位の個人成績にも顔をしかめるばかりだった。
「(上位校の)他大学のエースたちと比べると、まだまだだなって」
それでも、収穫がなかったわけではない。どの位置でたすきを受けとるのか読めないなか、落ち着いて前を追いかけ、すぐに捉えることができた。
「(学生三大駅伝で)たすきを受けて、つなぐのは初めてだったので、少し不安もあったのですが、それを経験できたのは良かったです。箱根駅伝につながると思います」
最後の大舞台では得意の区間以外の選択肢も頭に入れている。前年度は全日本大学駅伝の1区で区間賞を獲得するなど、実績は十分。本人も集団内の駆け引き、ラストスパートを仕掛けるタイミングには自信を持っている。自らの適性を考えると、大手町のスタートラインに立つのがベストかもしれない。


