第102回箱根駅伝(2026)BACK NUMBER
「必死に耐えて後ろにつなげたい」日本体育大学・平島龍斗が最後の箱根駅伝に期す覚悟と頼もしき同期への思い
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杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byYuki Suenaga
posted2025/12/10 10:01
箱根駅伝予選会を総合8位、チームでは一番手で走りきった平島龍斗
ただ、優先するのは8大会ぶりとなるシード権の奪取である。強豪校と比較すれば、有力選手が多いわけではない。前回大会、5区で区間11位と踏ん張った主将の浦上和樹(現4年)は、故障の影響で先が読めない状況だ。仮に往路の主要区間を走る主軸の誰かが“山上り”に回れば、その代わりを務められる選手は限られる。平島は台所事情を理解した上で、ラストランに懸ける思いを口にする。
「本当は1区がいいのですが、チームの戦略もありますから。指導陣に『お前しかいない』と言われれば、2区を走る覚悟はありますし、行く準備もしています。現実的に考えて、そこで『区間上位を狙う』とは言えませんけど、必死に耐えて、後ろにつなげたいです」
出走日まで1日たりとも無駄にはしない。日々の練習で弱音を吐きそうになれば、箱根駅伝の洗礼を浴びた2大会前の苦い記憶を呼び起こす。1区で区間23位となり、茫然自失で涙に暮れた。大ブレーキとなったことはキャリアのターニングポイントになっているという。忘れ去りたい過去とも真摯に向き合い、強くなってきた自負がある。
ライバルかつ頼もしい同期
健志台キャンパスの真っ青なトラックでは、同期の主力からも毎日のように刺激をもらっている。前回2区で経験を積んだ山崎丞(現4年)、4区で奮闘した田島駿介(現4年)も往路の命運を握る存在。玉城良二監督は頼りになる3本柱に全幅の信頼を置く。
「重要区間で確実に仕事をしてくれる選手が、3人いるのは大きいです」
練習から火花を散らすほど対抗意識は強い。一貫して謙虚な姿勢を崩さない平島も同期の名前が出ると、強気な顔をのぞかせる。
「一緒に走るときは、絶対に負けたくない。いまは同じくらいの実力。箱根駅伝まで時間は残り少ないですが、ひとりだけ、抜け出したいですね。僕を含めて、3人ともすごく負けず嫌いなので、それぞれが同じことを思っていると思います」
タイプは三者三様でも、互いに力を認め合う仲。入学時から切磋琢磨してきた仲間には、特別な思いを持っている。
「あのふたりには感謝しているんです。自分がどれだけ調子が良くても、彼らは横にいたし、前にいることもありました。少しでも気を抜けば、置いて行かれてしまう。その気持ちを持って練習してきたので、自分もここまで成長できたのかなって」
集大成の箱根駅伝は3人そろって、笑顔で締めくくるつもりだ。79年連続79回目の出場権は1月3日の大手町で手に入れる。後輩への置き土産は、シード権が一番喜ばれる。4年間、箱根駅伝予選会を走ってきた3人組はよく分かっている。


