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車高がコンマ数ミリ足りずマクラーレン2台がまさかの失格…風雲急を告げるチャンピオン争いで裁定の要因となった“プランクアセンブリ”とは《ラスベガスGP》
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尾張正博Masahiro Owari
photograph byMcLaren Racing
posted2025/11/26 11:00
ラスベガスGPでまさかの失格となったノリスとマクラーレン
ハミルトンはフェラーリに移籍した今年の第2戦中国GPでも同様の理由で失格となった。第4戦バーレーンGPではニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバー)も同じ理由で失格となっている。
なぜ、違反が後を絶たないのか。それは、空気の流れを利用してダウンフォースを得るF1マシンは、パフォーマンスを得るためにできるだけ車高を低くしたいからだ。
違反を避けるため、各チームは走行後のプランクアセンブリの厚さを自主的に測定し、車高を調整している。
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ところが、今年のラスベガスGPは2日目が雨絡みとなって、初日の走行後に調整した車高が適正だったかどうかの最終判断が下せないまま、予選を迎えた。予選後はパルクフェルメ状態となるので、車高を含むマシンのセッティングは変更できない。
レースがスタートすると、マクラーレンは車体に取り付けているセンサーから、想定よりも過度に車体底部が路面に擦り付けられているという情報を得た。プランクアセンブリの厚さに自信が持てなかったチームはドライバーにペースダウンを指示したが、時すでに遅し。
チャンピオンシップへの影響
失格により、チャンピオンシップ争いはトップのノリスが390点、同2位ピアストリも366点のままに終わったのに対して、同3位のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)は優勝し、25点を加えて366点となってピアストリに並ぶとともに、トップと49点あった差を24点に縮めた。
残りは2戦+スプリント。選手権リーダーのノリスは残り2戦とスプリントをいずれも3位以上でフィニッシュすれば、自力で王座を獲得する。数字上は有利に見えるが、決してそうではない。規定ギリギリまで車高を下げないと、レッドブルに太刀打ちできないことがラスベガスGPで露呈したからだ。
次戦カタールGPが行われるロサイル・サーキットは高速コーナーがいくつか存在し、ラスベガスよりも車高が重要となる。これ以上、違反できないマクラーレンが3位以上を確保するのは簡単ではない。

