フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
「後悔しないように…」演技直後、涙の跡が残った友野一希(27歳)が記者陣に見せた覚悟「うまいから点数が出る競技ではない」「あとは信じ切る力」
posted2025/11/26 17:02
スケートアメリカで総合3位となった友野一希(27歳)
text by

田村明子Akiko Tamura
photograph by
AFLO
11月14日、ニューヨーク州北部レイクプラシッドで開催されたGP5戦目、スケートアメリカ。男子は友野一希がSPで1位スタートしたが、翌日のフリーではジャンプミスが出て最終結果3位となった。ベテランのケヴィン・エイモズ(フランス)が初のGPタイトルを手にし、2位はミハイル・シャイドロフ(カザフスタン)だった。
フリー終了後、ミックスゾーンに現れた友野一希は、頬に涙を拭いた跡を残したまま、それでも気持ちを立て直したようにスッキリした表情で記者たちの前に立った。
「本当に今まで出たグランプリの分、全部詰め込んで、もう最後かもしれないなあ、と思いながら……まあわかんないですけど。でも海外試合とか、ここまで本気で取り組むのは最後になるだろうし……わかんないですけど……」
ADVERTISEMENT
27歳の友野は、オリンピックシーズンの今季を最後に競技引退をほのめかしていた。今季で区切りをつけるのか、あるいはもう少し続けるのか。まだ決め切れない思いが表れた言葉だった。
「後悔しないように、1番の選手になるんだという気持ちで演技できたので、それがいちばんの収穫ですごく良かったかなと思います」と言葉を結んだ。
ノーミスで滑り切った友野のSP
このスケートアメリカの男子SPは、予想以上に見ごたえのある戦いだった。28歳のエイモズ、30歳のジェイソン・ブラウン(アメリカ)そして友野と、特に音楽表現に秀でたベテラン勢が顔を揃えたのである。
ブラウンはソチオリンピックシーズンに演じてYouTubeで400万回再生されたプログラム「リバーダンス」を、今季はアップグレードした振付でSPに。会場を熱狂的なスタンディングオベーションに包んだ。エイモズは自分で振付をしたプログラムで、後半のステップシークエンスで会場を盛り上げた。試合ならではの緊張感がありながらも、エキシビションのようなカラフルな演技が続き、フィギュアスケートを見る楽しさを改めて堪能させてもらった。
友野が演じたのは、シェイリーン・ボーン振付、ソフィ・タッカーによる音楽の「That’s It」。「振付師のシェイリーン・ボーンさんが沢山の曲を送って下さったんですけど、その中でこの曲を一回目に聞いた時から、僕はこれで滑るなというイメージがでてきて、本当に(選んだのは)直観です」
4+3トウループ、続いた4サルコウもきれいに成功させ、軽快なリズムにのって切れ味の良い動きを見せ、最後までノーミスで滑り切った。


