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予選16位から3位表彰台へ…サンパウロGPのフェルスタッペンに驚異的な速さをもたらしたレッドブルのエンジニアたちの決断
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尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images / Red Bull Content Pool
posted2025/11/13 17:00
ブラジルGP決勝で予選16番手から3位入賞を果たしたフェルスタッペン
レッドブルのローラン・メキース代表はその理由をこう語った。
「マシンからより多くのパフォーマンスを引き出すためには、リスクを取る必要があった」
しかし、その変更は功を奏するどころか裏目に出て、セットアップはさらに悪化してしまう。フェルスタッペンは予選で16位に沈み、Q1敗退という衝撃的な結果となった。
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そこでエンジニアたちはスプリントの角田同様、フェルスタッペンをピットレーンからスタートさせる決断を下す。フロアは旧型のまま足回りのセッティングを変更、さらにパワーユニットをすべて新品に交換した。
これらの変更によって、フェルスタッペンのマシンは息を吹き返す。
日曜日のレースで、フェルスタッペンはグリッド上からスタートした18台が1コーナーを通過した後、ピットレーンからスタート。序盤にタイヤがパンクするという不運に見舞われながらも驚異的なペースで追い上げ、17周目にはトップ10圏内まで浮上した。さらに51周目には上位勢がピットインしたため、トップに躍り出た。その後、ピットインしてタイヤを交換したフェルスタッペンは4番手でコースに復帰すると、3番手を走行するジョージ・ラッセル(メルセデス)をオーバーテイク。終盤、2位のアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)とテール・トゥ・ノーズのバトルを演じるもわずかに及ばず、3位でチェッカーフラッグを受けた。
モータースポーツの速さとは
優勝したランド・ノリス(マクラーレン)との差は約10秒。ピットレーンからスタートし、序盤にパンクしてピットインしていたことを考えれば、優勝していても不思議ではなかった。優勝したノリスも、「今日は彼の方が速かった。しっかりと分析したい」とフェルスタッペンの走りを讃えていた。
モータースポーツはレーシングマシンという道具を使用して戦われる。ドライバーの腕はもちろん重要だが、マシンを速く走らせるためにどんなパーツを選択し、どう調整(セッティング)するのかも重要な要素となる。それはF1であっても同様で、さまざまなファクターが複雑に絡みあうからこそ、レースはおもしろくなる。
サンパウロGPはその典型であった。「全車同じマシンでレースしたら……」という議論は、この世界ではナンセンスなのかもしれない。

