第102回箱根駅伝(2026)BACK NUMBER

「攻めの5区にしたかった」全日本大学駅伝を制した駒澤大学・藤田敦史監督がつなぎ区間にエース格を投入した“区間配置”の妙 

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小堀隆司

小堀隆司Takashi Kohori

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posted2025/11/10 10:00

「攻めの5区にしたかった」全日本大学駅伝を制した駒澤大学・藤田敦史監督がつなぎ区間にエース格を投入した“区間配置”の妙<Number Web> photograph by JIJI PRESS

5区で國學院大學の飯國新太(右)をかわして先頭に立つ駒澤大学の伊藤蒼唯。伊藤は大会MVPを獲得した

 今季の大学駅伝は、例年にまして戦力が拮抗している。出雲駅伝の上位3校と、全日本大学駅伝の上位3校がすべて入れ替わったことがその証である。

 今大会では2位に中大が入り、3位に昨季の箱根駅伝で連覇を果たした青学大が入った。中大は出雲駅伝で10位と惨敗していたが、もともと個々の選手の能力は高い。こちらもようやく本領を発揮してきたようだ。

 レース後の藤原正和監督の表情も穏やかだった。

「結果を求めるのは全日本駅伝からだと言ってきて、選手はよく走ってくれました。2位は悔しいですけど、選手が自信を取り戻してくれたのは大きいんじゃないでしょうか。特に4年生の溜池(一太)がなんとか箱根駅伝につなげようとして最後に順位を上げてくれた。ちょっと心打たれるような走りだったので、部員はさらに奮い立つと思います」

 最終8区では早大の工藤慎作(3年)が56分54秒の好タイムで区間賞を獲得。早大OBの渡辺康幸氏が持つ日本選手最高記録を30年ぶりに5秒更新したことが話題となったが、溜池もそれに次ぐ57分03秒の好走で、力があるところを見せつけた。

 箱根駅伝はさらに区間の距離が延び、その数も10区間に増える。特殊区間への対策も求められるが、藤原監督はこう言って自信をのぞかせる。

「区間が増えた方がわれわれとしては嬉しい。そういう意味では、この1年は箱根駅伝(が勝負)だという思いで全員でやってきていますので、その成果を2カ月後にしっかりと出したいです。前回は山でやられたので、そこの対策もかなり力を入れてやってきました。自信ですか? ありますよ(笑)」

 チームの特徴である「速さ」に加え、今年は「強さ」を身につけようと走り込みの量を増やしてきた。8月、9月は各選手が前年よりも200kmほど月間走行距離を上乗せし、スタミナをつけてきたという。

虎視眈々の監督たち

 この中大の変化に、青学大の原晋監督も警戒感を隠さなかった。

「やはり駒大、國學院大、青学大、中大、この4つが強いね。箱根駅伝はこの4強で優勝を争うことになるんだろうなと思います。ただ箱根駅伝はね、私どもが勝ちますよ」

 所々で取りこぼしはあったが、6区で新戦力の飯田翔大(2年)が区間賞を獲得、7区では大エースの黒田朝日(4年)が区間新記録をマークするなど、出雲駅伝で7位に沈んだチームを立て直してきた。「実力のある選手がまだ本来の力を出せていない」と原監督は言うが、裏を返せばそこに、チームとしての上積みが見込めるということだろう。

 直近11年で8度の総合優勝は伊達ではない。箱根駅伝の勝ち方を知る青学大がここからピーキングを合わせてくるのは、どの大学も織り込み済みである。

 今回5位に入り、5強の面目を辛くも保った早大の花田勝彦監督は、レース後にこんなことを話している。

「タイム的にはおそらく、早稲田新記録じゃないですかね。万全のオーダーが組めない中で、選手たちはよく走ってくれたと思います。ただ、周りを見るとね、駒大、國學院大、青学大が箱根駅伝になったらやっぱり来そうだなって。あと帝京大学(6位)もホントに強いので、今は油断すると平気でシード落ちまでいってしまう。おそらく箱根駅伝も大会新記録のペースでいかないと優勝できないので、そこまでチーム力を上げられるかどうかですね」

 優勝したチームは勝った喜びを原動力に、負けたチームはその悔しさを糧に、それぞれが箱根駅伝に向けて牙を研いでくるだろう。今季はどの大学も、より箱根駅伝にフォーカスしてチーム力を磨いている。各大学の監督が知略をめぐらせた理想の区間配置が組めるかどうか。それが、勝利のキーポイントになりそうだ。

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